二章 死神⑨
しばらくして注文した料理が運ばれてきた。
「なかなかの料理です。値段がいいだけはあります」
早速料理に手を付けているツズファに、何か言ってやろうかと口を開くと、タイミングよく、その口にパンが押し込まれた。
「ん……が?」
パンが口に押し込まれているため、くぐもった声しか出せなかった。
「あなたの行動パターンは分かり安すぎですよ」
目の前でツズファが必死に笑いを堪えている。
――この野郎。タイミングよくパンを押し込みやがったな。
「て……手前」
なんとかパンを飲み込み、それだけ発することが出来たが、さらに運ばれてきた料理に次の言葉を失った。
「ご注文の特大パフェでございます」
「ありがと」
アテラが軽く礼を言う。
イザーナは一瞬我が目を疑った。
その三十センチはあろうかという容器に、これでもかと言わんばかりに、詰め込まれた、フルーツや生クリーム。そしてその物体に、さも当然のようにスプーンでつついているアテラ。
「おい、コラ」
アテラの腕を、がしっと掴み、言う。
「いつ頼んだ?」
「さっき」
「どうやって?」
先程から一緒にいたのだ。頼むチャンスは無かったはず。
「ウーノさんに」
「ウーノ?」
記憶を巡らせる。
そういえば何か話していたような……。
「いいじゃないですか、これぐらい」
ツズファがパンをかじりながら、涼しげに言った。
「あのな……」
イザーナは何か言おうと口を開くと、再びタイミングよく口にパンが押し込まれた。今度はアテラだ。
「…………」
――こいつら兄妹は……。
イザーナは、口を塞ぐパンを味わいながら、疲れたように、ため息を吐いた。