二章 死神⑦
「イザーナさん……ですよね?」
笑うアテラに眉をしかめていると、突然後方から、自分の名前が発せられた。
「だから先程から申しておりますが、違います。人違いです」
それと続いて、聞き覚えのある、別の声が聞こえてきた。この声は――ツズファだ。
「でも……」
「あなた意外と頑固ですね。私の名はツズファ。あなたの望む人物ではありません」
振り返ると、やや不機嫌な顔をしたツズファの前に、この店のウェイトレスらしき女性がいた。少し背の高めな女だった。
その二人のやり取りを眺めていると、ツズファと目が合った。
「あちらでしょう? あなたの望む人物は」
ツズファは、こちらをあごで促す。それに反応し、ウェイトレスがこちらを振り向いた。
「あ……」
ウェイトレスが呟きにも近い声を漏らす。
「ん?」
目を細め、そのウェイトレスの顔を確認する。
「……お、覚えていますか……? 私――」
「ウーノ?」
その声を聞くと、そのウェイトレス――ウーノは目を大きく開き、満面の笑みで頷いた。すらりと長く伸びた手足と、長く透き通るような銀髪が印象的で、背の高さも合わさって、凄く目立つ容姿だ。
「覚えていてくれたんですね! うれしいです!」
「知り合い?」
少し低い声でアテラが尋ねてくる。その少し怒りが混じった視線は気にしないことにする。
「あぁ、彼女は、その……仕事で」
「あなた仕事していたのですね」
「うるせい!」
ツズファは軽口をたたきながら、席に座った。
「その節はお世話になりました」
ウーノはそう言って頭を下げる。
「あぁ、あれからはもう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで」
ウーノは頭を上げ、視線をツズファのほうに移動させた。
「ところで、そちらの方々は?」
その問いに、イザーナは一瞬言葉を詰まらせる。まさか導き手とは言えない。