二章 死神⑥
だからな、と前置きし、
「どういった原理――つーか、仕組み? が働いている、って聞いてるんだ。こう、科学的にどうこう、みたいな。分かるか?」
アテラはコクンと頷く。
「分かる――けど」
アテラはしばらく考えた後、グラスの氷を取り出して言葉を発する。
「これは氷。分かる?」
「ん?」
突然の問い。
「それがどうしたんだ?」
「この氷は溶けるよね?」
特に答える言葉も見つからなかったので、とりあえず頷いておいた。
アテラはたどたどしい口調で言葉を紡ぐ。
「この氷が溶けるのは温度が上がって分子が離れるから。簡単に言えばこうだよね? それじゃあ分子とは? 原子とは? そう言って、どんどん細かくしていけば、目で見て手で触れるものは、どんなことも科学的に表せる。もちろん神も幽霊とは違って目で見て手で触れるから表せるらしいけど……」
「けど?」
「……無理なの。確かに表すことは出来るよ。でも神の体は細胞が死なない、それだけだから。何故死なないか。この世界の科学で表せるかもしれない。でも細胞が死なないのは神の特別な力が働いているからで……えっと、だから――」
アテラは言葉が思いつかないらしく、そのまま黙り込んでしまった。どうやら相当難しい質問だったらしい。
「……そういう物だと思うしかない、てか?」
イザーナがそう言うとアテラは、そう、と言って何度も頷いた。
「なんじゃそりゃ……」
「そういう、モノなの。兄貴は神になることを、神のシステム、もしくは――」
「神のプログラム、ってか? アイツらしいな」
「あなたらしい」
「あ?」
眉をひそめ、何がだよ、と問う。
「自分で気付いてない?」
そう言って、アテラは小さく微笑む。
「あなたも兄貴も、一つの物事を無理矢理いろんな物に例えようとしてるってこと」
「……そうか?」
アテラの言葉に、イザーナは今までの自分の言動などを思い出そうと、考え込む。そんなイザーナの様子にアテラはクスクスと笑い始めた。