二章 死神④
「あまり高いのは頼むなよ」
メニュー――特に特大パフェとか書いてある箇所――を食い入るように見つめているアテラに、イザーナは言った。
「この店はそれなりにいい値段だからな」
「先程まで奢ってやるとか言っておきながら――ケチですね」
「文句があるなら、お前が払え」
「私が現金を持っていると思いで?」
ツズファは水をがぶ飲みしながら、こちらを挑戦的な眼で見据えてくる。
「貧乏を自慢するなよ」
「自慢ではなく――えっと……」
言葉を考えているようだ。アホか。
しばらくしてウェイトレスが注文を受けに訪れた。イザーナはアテラが口を開く前に、三人分の注文をした。
「――以上で宜しいですか?」
「宜しい。早く下がってくれ」
何かを言おうとするアテラの口を塞ぎながら、早々に立ち去らせた。
「…………」
アテラが不満気のこもった視線を投げかけてくるが、受け流す。
「しつこいでしょうが――ケチですね」
「いい加減黙ってねえと、その胡散臭いツラめり込ますぞ」
「胡散臭い……あなた自分の顔ですよ?」
注ぎ足された水を一気に飲み干し、こちらをやれやれ、と言わんばかりの目で見据えてくる。
「あなたの元の肉体は、頭、上半身、下半身とそれぞれ三つに分けられているのは、説明しましたよね?」
「確かな」
「そして私が、あなたの頭を媒介とし、知性、理性などを持っているのも言いましたね」
「私も理性はある……」
アテラが抗議の声を上げるが、ツズファは無視して続ける。
「つまり……何が言いたいんだ?」
「あなた、とことん馬鹿ですね。つまり、私は頭を媒介としているので、顔の作りは、あなたとほとんど変わらないのですよ」
ツズファの言葉と同時に、イザーナの眉は一気にひそめられた。
「……嘘だろ」
「何ですか、その嫌そうな顔は」
ツズファの言葉を無視し、その顔をまじまじと見つめた。