一章 造神42
「一、十……って、五千しかねえじゃねえか! 最初、五万はあっただろ! どこやった!?」
「これ」
アテラは、両手で抱えている、大きな袋を見せる。
「……何だ、それは?」
「ゲーム」
「はぁ!?」
意味が分からず、頓狂な声を出す。
「ゲームに四万五千も使ったのか、お前は!」
「家にあるやつ古いんだもん」
アテラは、悪びれた様子もなく、しれっと答える。
「それに兄貴が好きに使っていいって渡したから」
「……あぁ?」
首をぐるりと回し、ツズファを見る。
こちらの視線に気付いたツズファは、訳が分からない、とでも言うように首をかしげていた。いつもの笑みで。
「…………」
最悪だ、と呟き、ため息を吐く。それと同時にむなしく腹が鳴った。思えば今朝から何も食べていない。
「イザーナ殿。いつまでうなだれているのですか。早く行きましょう」
顔を上げると、ツズファがあごで催促してきた。
「この野郎……」
「あなたもおなかがすいているでしょう?」
「勝手に推測するな」
「今朝から何も食べていないじゃないですか」
「俺はな――」
「ねぇー早くー」
二人の様子から、また言い争いが起こると思ったのか、アテラが二人の肩を掴み、揺さぶってきた。
「おなかすいたー」
「アテラ、はしたないですよ。そもそもこの原因を作ったのはアテラでしょうに」
「……兄貴でしょ」
「お前だろ」
「…………」
イザーナとアテラ、二人に指摘され、ツズファは、やれやれ、と額に手をやる。
ツズファの様子に、二人は満足気に鼻を鳴らす。
「さて、いい感じにツズファを負かしたから、行くか」
「だね」
共通の敵を倒したことで、二人はすっかり意気投合していた。その二人の様子に、ツズファは苦笑を漏らすしかなかった。