一章 造神41
ツズファはその指を見て、次にアテラの顔、そしてイザーナの顔と視線を動かしていき、最後に大きく頷いた。
「いいでしょう。それでも別に構わないでしょう」
そう言って、不気味な笑みを浮かべた。
「……お前ら、頼むから第三者にも分かるコミュニケーションをとってくれ」
イザーナは呆れたようにため息を吐きながら、そう言った。
「ねぇ、おなかすいた」
イザーナの裾を引っ張り、アテラが催促してくる。その仕草に、イザーナは疲れたようなため息を吐くと、アテラは、さらに激しく引っ張ってきた。
「……分かった、分かった、なんか食わしてやるよ」
イザーナがそう言うと、アテラは、はにかみながらも、にっこりと微笑んだ。ツズファとは似ても似つかない、かわいい笑みだ。
「ツズファはどうする?」
顔を前に戻し、尋ねる。
「私ですか?」
ツズファはしばらくこちらを見て、考えた後、
「別に構いませんよ。傷もそんなに目立たないようですし」
相変わらずの不気味な笑みを浮かべて、言った。
「じゃあ、行くか。えっと、今どれくらい金あったかな、と」
上着のポケットから財布を取り出し、中身を確認しようとすると、
「あ、これ」
呟きのような声を出しながら、アテラは自分のジーンズのポケットから、くしゃくしゃに丸められた紙幣を取り出した。
「ん? あぁ、構わねぇよ。奢ってやるから」
手を振って、口元に笑みを浮かべる。するとアテラは顔をうつむかせ、
「いえ、違……くて……」
しどろもどろに、こう言った。
「お金……返します」
「返――えっ!?」
アテラの言葉の意味を理解し、慌てて財布の中身を確認する。その中は――物の見事にすっからかんだった。
「……いくら使った?」
アテラの手から、金をむしり取り、残金を数える。