一章 造神30
「とりあえずあのガマガエルをぶっ殺す。それでいいんだろ?」
「人の話を聞けと言っているのです」
「聞いているって。てか、人じゃないんだろ、お前」
「黙りなさい。いいですか――」
言葉に怒気をこもらせ、イザーナを黙らせる。ふん、と鼻を鳴らし、イザーナは口を閉じる。ツズファは静かになったことを確認すると、前方の二人を交互に確認して言葉を紡ぐ。
「あのガマガエルがどんな奴か知っていますか?」
そう言って、こちらを背中越しに、見る。その探るような視線に苛立ちながら、イザーナは低い声で返す。
「……知らないって言っただろうが。大体今頃になって――」
知りたくもない、と呟いた。
「おや、それは何故?」
ツズファは、そのままの姿勢で、尋ねてくる。
「……今から殺す奴のことを知ってどうするんだよ」
「……あの男はですね――」
ツズファは顔を前に戻し、語り始めた。
「先程も申したとおり、どこにでもいる小悪党です。金貸しも行っているそうですが――利子が一週間で借りた額の三倍近くに跳ね上がります。無茶苦茶です。言うまでも無く、悪徳業者です」
「分かったからそれ以上言うな。気分が悪くなる」
イザーナは吐き捨てるように言う。
「とにかくガマガエルを殺す。余計なことを言うな」
「ああ、それは困ります」
「……?」
イザーナは眉をひそめ、ツズファを睨む。
人の話は最後まで聞くものです、とツズファはこちらに顔を向ける。
「すみません、肝心なところをお教えしていませんでした」
ツズファは、ぎこちない不気味な笑みを浮かべて、言う。
「救うのはミイラ男のほうでなく、あちらのガマガエルのほうですよ」
「……は?」
一瞬、イザーナは呆けた声を出した。
「あんな――」
――あんな屑を助けろと?
「ええ、そうです」
考えていることを悟ったのか、ツズファは不気味な笑みをますます大きくする。
「それが使命です。出来なければ死ぬことが出来ませんよ?」
「ふざけるな」
イザーナは不快感そのままに言葉を発する。