一章 造神28
「……この先の地獄はあなたを狂わせるでしょう。そして何もかもが消えていく。あなたは怒り、嘆き、絶望する。すべての娯楽は虚無を生み出し、すべての快楽は失望を生み出す。そして後悔するでしょう。永遠に終わらない命を得てしまったことを。あなたの心は暗黒に包まれ、そして捧げられる」
ツズファは、ふぅ、と息を吐き、目を細める。
「それでも……それでもあなたは最後には笑うのですよ。自分や神を含むすべてのものを笑うのです。満たされた幸福に包まれて……」
帽子を被りなおし、悲しいものですね、と言葉を吐き捨てる。
「ん? なんか言ったか?」
イザーナが肩越しにこちらを見る。
その顔を見ていると、自然と笑みがこぼれてきた。
「いえ、ちょっと使命について言っておきたいことがありまして。あなたが救わなければならない人間は、残り一四九三人です」
その言葉にイザーナは眉をひそめる。
「あ? ちょっと待て。俺はまだ一人も救ってないぞ」
その疑問の声にツズファは、あぁ、と何かを思い出したような言葉を漏らす。
「忘れていました。それは他の神が救ったやつです。さすがに一人では無理なので協力してもらっているのですよ」
「赤の他人にか?」
「使命のダブりですよ。あなたの使命だって何人かの神とダブっているのです」
「そうか……」
「じゃあ俺がやらなくてもいいか、とか思いましたね」
ツズファは笑みを強め、言葉を投げかける。
「……思ってねえよ」
「否定するところが怪しいです」
「じゃあ肯定しろってか? それじゃあ無実を証明できないだろ」
「疑いをかけられた時点であなたの負けですよ」
「どういう理論だ」
「そういう理論です」
「その答え方、頭が悪いことをアピールしているだけだぞ」
「あなた今、自分で自分を馬鹿と言っていますよ」
イザーナが我慢の限界に達し、本気で殴ろうとした時、来ましたよ、とツズファが呟く。
「何が?」
一応拳を収め、ツズファの目線の先に顔を向ける。