一章 造神26
「おい、使命のほうの説明がまだだぞ」
「話をそらしましたね。私の勝ちです。どうでもいいですが」
ツズファは再び不気味な笑みを口に浮かべる。
「それで使命でしたね。余計な事とは思いますが、一応答えましょう。使命とは全ての神が持つ、神の証と言えるものですね」
「あ――」
「いちいち聞き返さないで下さい」
「…………」
口を開いた瞬間に、先手を取られてしまったので、イザーナは仕方なく口を閉じた。
「それではまず証とは何か、ですね。実は世界には償いとしての神以外にも様々な神がいます。例えば、一種の芸術を極めた人。そういった人は死ぬには死にますが、普通の人間より死ににくい体になります。これは半端な神でヒールと言われています。一部ではハーフアンドハーフとか言われていますが」
そこで言葉を区切り、こちらの目を見る。質問どうぞ、という意味なのだろう。その態度にやや不満を覚えつつも、質問をする。
「神様は芸術好きなのか?」
ツズファは何かを考えるように視線をさまよわせつつ、答える。
「さぁ、詳しいことは分かっていませんね。ただ、絵には魂が宿るとか、どこかで言われていますが……関係無いですね。それでは続きを」
ツズファは軽く息を吐き、再び口を開く。
「その証で、その神が償いの神なのか、そうでないのかが分かるわけです。ではどうしてわざわざ証を付けるのか。それは不要な神と必要な神とを分けるためなのです――いい学習能力です。聞き返さなくなりましね」
イザーナの眉がまたも不快気に動く。
「……俺を猿か何かと一緒にしてんのか手前は。てか、お前聞き返されなくて本当は寂しいんだろ?」
「それでは不要な神とは何か、を説明しましょう」
無視かよ、と呟く。
「今現在、神は世界に数え切れないぐらい、大勢います。それはもう、ゴキブリ並みに」
こちらをちらっと見る。そのまま黙っていると、何かを諦めたのか、説明を続ける。
「一番多いのは償いの神です。それ以外の神なんて、ごく一握りです。そして償いの神は、元が罪人であるからなのか、使命を果たそうとせず、不死身なのをいいことに犯罪に走りやすいのです。ですが、そんな彼らを処罰するシステムがあります。その時のために証は必要なのです。ヒールか償いの神か分からないじゃ、話になりませんから。ちなみに処罰の対象となるのは……」
思い出そうとしているのか、目を瞑り、続ける。