一章 造神23
煙草に火を付けると、気分がだいぶ落ち着いてきた。
「心配しましたよ。神の説明受けたときのような錯乱をしないかと」
「俺も大方分かってきたからな。ただ――少しばかりショックだっただけだ」
二人は今、大通りの真ん中を並んで歩いていた。車の通りが少ないため、文句は言われない。
「しかし使命なんてこなしても、この町は何も変わらないと思うぞ」
煙を吐き出しつつ、皮肉気にそう言うと、
「何も変える必要はありません。ただ使命をこなせばいいだけです」
さらりと返される。イザーナの眉が不快気に動く。
「なんだよ、そりゃ」
イザーナは足を止め、言葉を吐き出す。
「それじゃあ、俺が神になる意味が無いんじゃないのか?」
「別に意味はありませんよ?」
ツズファはくるりとこちらを向くと、無表情のまま続ける。
「あなたにとって今大事なのは、こんなくだらない会話を続けることではなく、使命をこなすことです」
そのツズファの言葉に、さらに眉が不快気に動く。
「さっきから使命、使命って、なんなんだよ、その使命ってのは!?」
イザーナは語尾をやや上げて返す。
「昨日言いませんでしたか?」
先程と全く変わらない表情でツズファは言った。
「あなたの使命は、千五百人の命を救うこと、です。何度も言わせないで下さい」
「そういうことを聞いてんじゃねぇ!」
イザーナはそう叫ぶなり、自分の拳を壁に叩き付けた。
「骨折れますよ」
「話をすり変えようとしてんじゃねぇ!」
そう返すと、ツズファは心外だと言わんばかりに肩をすくめる。
「ただ心配しただけですよ。酷い言いがかりです」
「いいから答えろ!」
イザーナは一呼吸おいて口を開く。
「これは昨日聞いても答えなかったよな」
先程からいろいろありすぎて、苛立っているのか、無意識に言葉に怒気がこもる。
「何でしょうか?」
イザーナは煙を吐き出し、言った。
「何で罪を犯して死んだ奴は神になるんだ?」
「それは償いです」
ツズファは即答する。