一章 造神⑮
「な、なぁ……」
スザーノがゆっくりと口を開いた。
「全部思い出したのか?」
その言葉に、イザーナは、口の両端を持ち上げ、笑みを作る。
「あぁ、思い出しちまった……。昨日のことを、何もかもな」
「そうか……」
その言葉にツズファの瞳に、やや憂いを帯びた色が浮かぶ。
「それで、あなたは……どうなのですか?」
イザーナはその質問の意味が分からず、尋ね返す。
「何が?」
ツズファは、いえ、と小さく言い、発言する。
「これからの心境ですよ。大丈夫と思いますか?」
イザーナは軽く鼻で笑い、腕を組みながら言った。
「お前のその鼻に付く話し方――それを聞くとマジで実感できるぜ」
ため息を吐く。そして自分にゆっくりと言い聞かせるように言った。
「俺が一度死んだってことがな」
鼻を鳴らし、自嘲気味に笑う。ツズファは頷きながら口を開く。
「ええ、そうです。それなら、もう分かっていますよね?」
ツズファは微笑んだ。
「使命……か……」
「はい――」
そうです、と言うと、手に持つ拳銃をこちらに差し出す。
「それでは行きましょう。もうそれほど時間がありません」
「…………」
イザーナは差し出された拳銃を見つめる。
「これは……俺の銃……?」
その言葉に、ツズファはゆっくり頷く。
「えぇ。あなたが自分の頭を撃ち抜いた」
イザーナは視線をツズファに向ける。
「……これが必要なのか?」
「時には」
「…………」
イザーナは口を閉ざし、拳銃を受け取る。そしてそれをズボンに挟み込んだ。