一章 造神⑨
「ぐ……あ、あなたに諭されるなんて……屈辱です」
「屈辱? 何言ってんだよ。これだから理性、知性、ついでに高慢から生まれた兄貴は」
「最後は余計です。大体今の言葉はイザーナ殿も高慢だと言っているようなものじゃないですか」
「高慢で合ってんじゃあねぇの? なんか見た目がそんな感じじゃ――んがっ!」
先程の思惑通り、彼はその男をもう一発殴った。大きく息を吐き、苛立たしげに口を開く。
「おい、お前ら質問に答えろって、さっきから言ってるだろうが! 何なんだ手前ら! 泥棒か!?」
「…………」
そんな彼の様子に、兄貴と言われていた男は、やれやれ、とため息を吐く。
「面倒ですね、二度も説明するのは」
「二度?」
そいつは、はい、と頷くと、近くのソファに腰を下ろし、ゆっくりと口を開いた。
「時間が経てば戻るのですが……まぁ、軽く説明することにしましょう。そのほうがあなたもおとなしくなるでしょうから」
「もったいぶってないで早く言え」
自分も同じように腰を下ろし、あごで促す。
「分かりました。言いましょう。今現在あなたは――」
そいつは顔に不気味な微笑みを浮かべ、はっきりとした口調で言った。
「神様です」
「…………」
沈黙。
だが彼の沈黙には全くお構いなしに、そいつはさらに語る。
「そして私達はあなたの体より生まれ、肉体の保存を兼ね、あなたを導くために存在します」
「…………」
「呼び方は自由です。私達にもそれぞれの名がありますが、導き手と言うのも一つの名ですから。まぁ、アテラは導き手と言われるのはあまり好きじゃないと言っていましたが……」
「…………」
「そしてここが重要です。あなたは不死身です。ですが死なないだけで肉体は元の治癒力を超えて再生することはありません。その辺はあとでスザーノに説明してもらいましょう」
「……おい、ちょっと待て」
「はい?」
彼はひとまず口を挟み、訳の分からない説明を一旦止めさせる。