表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IZANAGI  作者: 佐久謙一
105/108

三章 導神⑳

「私も一応――生きていますから。あなたが死神になろうものなら、私達はヨミの餌となる。そして……私達は死神のあなたとなるのです。私は導き手として生まれ、神の使命をサポートする為だけの存在……。それでも私は生きたいのですよ。命があるのですから」

「……知るかよ」

 イザーナは冷たく言い放ち、ツズファの顔面を蹴り飛ばす。

「手前らがどうなろうと知ったことか。死ねよ。ヨミに食われりゃよかったんだよ」

 銃を持ち上げ、狙いをツズファの頭部に定める。ツズファは顔を上げ、不気味な笑みを浮かべている。その口や鼻から血が出ていた。

「あなたは――」

 ツズファはゆっくりと体を起こし、その場に跪く。

「あなたは――二度も自分を殺す気ですか? それも自分自身の為に」

「…………」

 イザーナは無言のまま銃口をツズファの額に押し付ける。

「ツズファ、俺は……イカれた人殺しだ」

 イザーナはゆっくりと口を開き、語り始めた。

「――俺の友人に、やかましいが、気の利く良い奴がいたんだ。ガキの頃から一緒に遊んでいてよ。そいつは将来、学者になりたいって言っていたんだ。だけど、一ヶ月前――死んじまった。殺されたんだよ。道歩いていたら、いきなり銃で撃たれてよ。救急車が来たときは、もう手遅れだった」

 ツズファは無言のままイザーナに視線を送り続ける。

「犯人は――すぐに見つかった。二人組みで……しかもまだ十二歳のガキだった……。理由は……誰でもいいから撃ってみたかった、だそうだ。笑えるだろ? そんな屑に俺の友人は殺されたんだ……。だからな、俺は――殺してやったんだよ。刑務所から連れ出して……体に少しずつ弾丸ぶち込んでやってなぁ。助けてって泣き叫ぶそいつらを――徹底的に痛めつけて……殺したんだよ。楽しかったぜぇ……。あいつらが泣き叫ぶ姿は……最高だった。まぁ、すぐにばれたんだが。それで捕まりそうになったところを、あの銃で頭をズドンだ。それで……俺の人間としての人生は終わった」

 話を締めくくると、イザーナは不意に空を見上げた。

「あの時も――こんな灰色の空だった」

 表情は見えないが、その声はどこか悲しげだった。

「なぁ、ツズファ」

 イザーナは顔をツズファに戻す。

「お前も泣くか?」

 そう言って、口元に不気味な笑みを浮かべた。それはツズファがよく浮かべる笑みと酷似していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ