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008★チャンス




燈和は、3キロ減のダイエットに成功した。

というより、もともとダイエットはしていない。

いつの間にか体重が減っていたのだ。

『恋する女は綺麗になる』

このことを指すのだろうか、と燈和は思っていた。


受験成功は遠い昔の話。

今は思いっきり高校生活を楽しんでいる。

高2の冬、再びキャンプシーズンがやってきた。

制服のまま、キャンプ地へと向かった。


ここ最近、毎日のように詰めかけている。

だから、もしかしたら顔を覚えてもらえたかもしれない。

が、正直分からない。

公園内に着いた途端、いきなり大粒の雨が降り出した。

雨をしのげる場所を探すと、1か所しかなかった。

プール横の自転車置き場。

自転車が数台置いてあるだけで、ガラガラだ。

そこで雨宿りすることにした。


誰かが走ってくる音が聞こえる。

軽快なリズムだ。


――――どこから聞こえてきてる…?


目もかすんで、雨の音もうるさくて、よくわからなかった。

だんだん音が近づいてきて、ゆるまった。

右を向くと、ぼんやりと人影が見える。

だんだん近づいてくるその影は、次第に見覚えのある服を着ていることが分かった。

チームの練習着。

かなり近くまでその人が来た時、心臓が止まるかと思った。

長谷川だったのだ。


「長谷川選手…ですよね?」

「はい」

「あの、サインしてくださいっ!!」


燈和は、持っていたサイン帳を差し出した。

もちろん、中2の時に買ったペンと去年買ったサイン帳。

1冊、サイン帳というものが完成したから、去年買い足したのだ。

長谷川は、サラサラとサインを書いて行った。


「あれ?えっと…この字、確か…ひ、ひより、だっけ?」

「は、はい…」

「ペン、落とした子だよね」

「そ、そうです!!」


長谷川は、燈和のことをなんとなく覚えていた。

泣きそうなほど感激だった。


「学校帰り?」

「そうです」

「学校から直接来たんだ?」

「はい。終わってすぐ、飛び出てきました」

「部活は?」

「部活、月・水・金に集まるだけだから…」

「えっ?何部?」

「新聞部です」

「へぇ~。野球部のマネージャーかと思ってた」


雨はまだやまない。

この時間がもっと続けばいいのに…




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