034★支えるということ
燈和は、学校で男女問わずの人気になっていた。
世話好きで、おっとりしてるのに野球好き。
しかも、かなりなファン度。
そのギャップがおもしろくて、いいらしい。
そのためか、よく告白されるようになっていた。
でも、全部断る。
それはもちろん、長谷川という存在がいるから…
「…付き合って下さい」
「ありがとう。でも…私、彼氏がいるんだよね」
今まで彼氏の存在を男子には明かしていなかった。
初めてその存在を教えたのは、同じ野球ファンの人だった。
いつも優しくて、話しかけてくれて…おもしろい人。
でもやっぱり、長谷川より上の人はいない。
憧れから理想、そして今は彼氏。
夢のような事が自分に起こっているから、毎日が楽しかった。
でも最近、長谷川は不調だ。
守備には問題ないけど、バッティングがどうも悪い。
だから、代打で途中から出場することが多くなった。
野球がない日、長谷川からメールが来た。
それも、とても心配な内容だった。
『俺、怪我してたみたい…
>だから2週間くらい試合に出られなくなった』
何と返事を打ったらいいのかが分からない。
球団のホームページに情報が載る前に、燈和に報告してきた。
後から知ったのは、怪我と同時に疲労がたまって体調を崩したという事。
心配な思いは募りに募って…
燈和を行動へと移させた。
急いでチケットを手配して、準備をして飛び立った。
自分から支えてあげると言ったのだ。
長谷川が不振の今、支えられなくてどうする。
こんな今こそ、支えてあげなくちゃいけないんじゃないか。
プルルル…
『もしもし?』
「もしもし、燈和だけど…」
『どうした?何かあった?』
「今、家にいる?」
『うん、いるけど』
「じゃぁ、今から行ってもいい?」
『えっ、来てるの?』
「うん。だって…心配なんだもん」
『…ありがとう。ずっと家にいるから、いつでもいいよ』
「わかった。あと1時間くらいで着くと思うから」
『了解。気をつけてね』
友達にはわけを話した。
もちろん、相手については話していない。
体調崩したみたいだから行ってくる、とだけ言った。
なんとなく状況を把握したみたいで、背中を押してくれた。
自分は周りの友達に支えられている。
自分は誰かを支える事が出来るだろうか。
長谷川を、支えて行くことが出来るだろうか。
まだ分からないことだけど、だからこそ今支えてあげないと。
長谷川のためにも、自分のためにも。




