033★敬語とタメ語
「そう言えばさぁ…ずっと思ってたこと、言っていい?」
「はい、いいですけど…なんですか?」
「何で敬語なの?」
「へっ?」
初めて気づいた。
燈和は、ずっと長谷川に対して敬語で話していたのだ。
普通付き合っているのなら、タメでもおかしくないはず。
「それが話しやすければいいんだけどさ。なんか、無理してるのかなーって」
「い、いや、無理してるとかじゃなくて…気付きませんでした」
「やっぱり、そうだとは思ってたけど。俺からのお願い、聞いてくれる?」
「はい…」
――――お願いって…今までされたことないよね…なんだろう?
「普通に会話したいなっ」
「へっ?ふ、普通に会話したい…ってのがお願いですか?」
「うん。なんか敬語使われてると、遠い存在って感じがするから」
確かにそうだ。
プロ野球選手として今までは見てたのだから、彼氏という存在になっても敬語を使ってきた。
もちろん、燈和よりも年上なわけだし。
ただ、長谷川がそう思ってたとは知らなかった。
「普通に…」
「ダメ?もし、敬語の方が話しやすいなら―――」
「じゃぁ、これからは敬語じゃなくする…」
どこかぎこちない。
でも、初々しい感じがしていいのかもしれない。
長谷川の目にどう映っているのかは、全く分からないけど。
「…やっぱ、今日いつもと違って可愛いわ。まぁ、いっつも可愛いけどね」
「なっ///」
「めっちゃ可愛いっ」
そう言って、燈和を優しくなでた。
やっぱり好きで仕方がない。
彼氏という存在になっても、誰かに取られそうで怖いと思う事がある。
だから想いはどんどん大きくなっていく。
長谷川の笑顔も、声も、優しさも…
すべてが好きだからこそ、不安になっていくのかもしれない。
ずっと傍にいてほしい…
そう思うようになったのも、それが原因かもしれない。
「…私、大学卒業したら絶対こっちに来る」
「ん?」
「ずっと、支えていたいっ///」
顔を真っ赤にしながら言う燈和。
その様子を見て、長谷川は少し驚いた。
そして、嬉しかった。
「俺も、ずっと傍にいたいな」
タイミングが良すぎる。
長谷川が言った後、すぐ花火が打ち上がった。
ピンクやオレンジ、緑や青。
真っ暗な空に打ち上がる光は、とても綺麗だった。




