表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/40

032★食べ盛りの子供




そういえば、と燈和は思った。

今隣を歩いているのは、超有名人。

プロ野球選手だ。

こうやって普通にしていて、大丈夫なのか?


「んー、大丈夫なんじゃない?普通の人間なんだし」


ちょっと投げやりな答えが返ってきた。

本当に大丈夫なのか…?


人が多く集まっている。

すぐはぐれてしまいそうなほどになってきた。

さすがは有名な花火大会。

田舎では考えられないほどのにぎわいだった。


「はぐれるなよ」


長谷川が優しい声で言った。

燈和はもう、どうかなってしまいそうなほどドキドキしていた。

頼りがいある言葉を、優しそうに言う。

そのギャップというものに、グッと心をつかまれた。


普段着なれていない浴衣。

やっぱり、どこか勝手が悪い。

でも、なんか気分は上がっている。

花火大会といったら、夏の代表的な行事だ。

さすがに都会は、私服の人の方が少ない。

雰囲気ていなものにこだわっているわけじゃないけど、なんかいい。

着心地の問題より、今は雰囲気の問題なのかもしれない。


「ちょっと時間あるけど、何か食べる?」

「でも、結構並んでますよね…」


田舎ではそこまで並ばない…


「そう?これ、普通なんだけどな」

「こ、これが普通、ですか」

「行列できて、在庫無くなることだってあるからね」

「ほぉ…」


違いが大きすぎる。

ちょっと頭がくらくらしそうだった。

都会は、そういう所なのか…


燈和と長谷川は、タコ焼きだのクレープだの、ちゃんと並んで買った。

そして、河川敷のまだ人がそこまでいないところで食べた。


「ここ、かなり綺麗に見えるんだけどね。人がまだ少ないや」

「これで人が少ないんですか…」

「やっぱり違うんだね。ここじゃコレ普通なんだよ」

「すごい違い…」


隣でおいしそうにタコ焼きを食べている長谷川は、子供のようだった。

いろんなものに興味を持っていて、目がきらきらしている。

そして、食べざかり。

食べないとだめなのは分かっているけど。


「これ、いりますか?」

「何で?食べないの?」

「いやぁ…なんか、食べてるところ見ると、幸せそうだなーって思って…」

「そう?まぁ、食べてる時って幸せだけどね」


最初は遠慮していたけど、長谷川は燈和の分のタコ焼きまで食べた。

そしてクレープは、燈和が半分しか食べてない時に食べ終わっていた。


――――何もかもが早い…やっぱ私よりも子供っぽいんじゃない?


11歳差あるとは思えない。

長谷川は、もうすぐ30歳だ。

年齢とは、分からないものだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ