028★午前0時
0時まで、相当長い時間だと思っていた。
でも、会話が楽しくてあっという間だった。
「あと2分くらいで消灯の時間だ」
「これが消えるなんて…想像できない」
燈和は、頻繁にタワーのてっぺんを見上げていた。
本当に想像できないのだ。
紅白歌合戦の時、白くライトアップする瞬間でさえ驚いたのだから。
カウントダウンが始まった。
近くにいたカップルは、あと何秒か数えている。
「3、2、1…」
瞬間の出来事だった。
今まで明々していた周りも、すっかり真っ暗。
本当に消灯した。
燈和は、ポカーンと空を見上げていた。
「驚いた?」
「まさかホントにパッて…」
「すごいでしょ」
「すごい…」
空いた口がふさがらないといった様子だ。
その様子を見て、長谷川は笑った。
「やっぱり子供みたいっ」
「それ言わないでくださいよ!!…学校でも言われてるんで」
「やっぱり?」
「やっぱりって!!…ヒドイっ」
「ごめんごめん。なんか、子供みたいに純粋だなーって」
学校でもみんなに言われる。
何に対しても、子供みたいだって。
無邪気に笑って、なにかと純粋で。
それがどういう意味なのか、よく分かっていない。
燈和は、子供みたいと言われるのが褒め言葉だとは、全く思っていなかった。
駐車場まで、あっという間だった。
まだ車の通りは多い。
いつもなら、こんなに多くない。
もちろん、それは燈和の住んでいるところが田舎だからだけど。
また助手席に乗って、シートベルトをしっかりとした。
長谷川が運転席に乗る瞬間、ふわっと甘い香りがした。
さっきの、シャンプーだろう。
それだけでドキッとする。
「遅くまでつき合わせて、ゴメンね」
「いや、ホント楽しかったですっ!ありがとうございました」
「そう?楽しかったならよかった」
車の中でも、会話は盛り上がった。
チームの選手の裏話が聞けたり…
ホテルの前に到着。
やっぱりいつ見ても、都会の中に建っているホテルは迫力がある。
夜は、電気がついてる部屋とついてない部屋の明るさの違いが面白い。
絵が出来ているみたいだ。
「ありがとうございました!!」
「どういたしまして」
シートベルトをはずして、ドアに手をかけた。
すると長谷川が、燈和の手首をぐっと掴んできた。
思わず、燈和はかたまってしまった。
「ねぇ……キス…しても、いい?」
そう言われると、今までとは違うドキドキが襲ってくる。
手先が痺れてきた。
コクンッ///
燈和が頷くと、長谷川の大きな手が燈和の頬をおおった。
ゆっくりと唇が近づいてくる。
頭がぼーっとしてきた。
「――!!///」
触れた瞬間、燈和は頭が真っ白になった。
今までとは違って、芯から痺れてくる。
燈和は、力の入らない手で長谷川のシャツをつかんだ。
もう顔は真っ赤。
それくらいわかっている。
ほのかに、甘いシャンプーの香りがする。
それが、さらに燈和の頭の中を真っ白にさせた。




