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026★試合後




待ってる時間はかなり長かったはず。

でも、全然苦じゃなかった。

遠くから白っぽい車が近づいてきた。

目の前で停車すると、窓が開いた。


「ごめん、遅くなった」


ユニフォームや練習着姿とはまた違う、白いTシャツ姿の長谷川だった。

細身な体とは違って、筋肉質な腕が見えている。

燈和のツボだった。

助手席に座り、シートベルトをしっかりとした。

いつもと違う長谷川が隣にいると、なんか新鮮だった。

初めて会った時みたいにドキドキする。

試合の後シャワーを浴びたのか、シャンプーの香りがした。


「移動、大変じゃなかった?」

「全然大丈夫です!なんか、楽しかったし」

「それならよかった」


笑うと見える真っ白な歯。

それが爽やかさを引き立たせていた。

日焼けして、またいっそう白が似合う。

ファンのみんなが言うように、まさに『爽やか王子』だ。



「ねぇ、これから時間ある?」

「はい、あとホテルに戻るだけなので…」

「東京タワー、見に行こっか」

「ホントですか!すっごい見に行きたいですっ!!」


夜はライトアップされている。

東京タワーには、小学6年のころに1度行ったっきり。

それも、曇りの日の昼間に。

晴れた日、そして夜は初めてだった。

田舎人からすると、憧れの観光地なのだ。

疲れて眠いはずなのに、すっかり目が覚めてしまった。

その前に、長谷川は大丈夫なのか?


「あの…疲れてるんじゃないですか?」

「俺?大丈夫だよ。どうせ家に帰っても、テレビ見たりゲームしたり」

「へぇ~」

「ま、普通の人ってことだよ」


確かに、それを聞くと普通の人。

もっと、練習したりしてるのかと思っていた。

それより…


「家って…寮じゃなかったんですか」

「うん。2年目で寮は出たよ」

「知らなかった…」


また1つ、知らないことを知ることが出来た気がした。

プロ野球選手という遠い存在。

でも、野球以外では普通の人。

一般人と、何の変わりもなかった。


東京タワーから離れた駐車場。

そこに停めないと、周りはダメらしい。

前回はバスでタワーの下まで行ったから、知らなかった。


「ちょっと歩くけど」

「大丈夫ですよ!まだ元気ですっ」




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