023★アルバイト
憧れだったはずの長谷川が、なんと彼氏に!?
高校生時代に、見事叶った恋。
だけど、今も昔もごく普通、大学生になった藤井燈和。
勉強を頑張って、結構いい大学へ入学できた。
自分の将来の夢に、1番近かったのだ。
燈和の将来の夢は、雑誌の記者だった。
それも、スポーツ雑誌。
女性向けのスポーツ雑誌を初めて見た中学2年。
自分もこんな記事が書きたい、そう思ったのだ。
「ひぃちゃん、これからバイト?」
「うん、バイト」
「そっかぁ…合コンのメンバー足りないから、誘おうとしたのに」
「ゴメンね。他あたって」
「わかった。じゃ、今度誘うからねっ」
「私、彼氏いるしーっ」
「えっ!!そうなの?」
「うん」
「いつも彼氏らしい人見ないから、てっきりいないかと…」
「…遠距離恋愛だからね」
「そうなんだ~。大変なんだね」
大変どころか…
言いそうになったけど、口を閉じた。
まだ誰も知らない。
だから、燈和が誰とも付き合ってないというイメージが強いのだろう。
この前も、ある人に告白された。
もちろん断ったのだが。
中学生時代はわりと体格がよかった燈和。
高校生時代に身長が少し伸び、髪を長くのばしていた。
大学に入ってからは、見事に痩せた。
そして、髪を肩の長さまで切って、幼さが増した。
みんなが言うには、可愛い系だとか。
自分がモテているのに気づいていない燈和。
その天然なユルいキャラが、人気の秘訣でもあった。
バイトはファミレスの店員。
その時間、時給が結構良かったのだ。
それまでしてお金をためる理由。
それはもちろん、試合を見に行くためだった。
「ありがとうございました~っ」
食器洗いも早く、客への対応もいい。
評判がかなり良かった。
正式な社員にならないか、とも言われている。
でも、それが夢というわけじゃない。
あくまで、燈和の夢はスポーツ雑誌の記者。
その夢を断念するようなことはなかった。
♪~♪~
ディスプレイには、『長谷川智行』と表示されていた。
メールが届いたのだ。
『チケット、取っておいたよ。
>空港に迎えに行けたらいいんだけど…
>試合だから行けないんだ。
>チケットは送っておくね。』
休み中に行くと言ったら、チケットをとってくれた。
人気の外野指定席だ。
応援が思いっきり出来る。
みんなに混じって、大声を出そうと思っている。
――――準備、始めないとなっ
航空券は1か月前から予約していた。
だから、あとは行くだけとなった。
貯めたお金で。
自分で頑張ったご褒美みたいで、ちょっと嬉しかった。




