021★証明
試合開始。
燈和はテレビの前で見守っていた。
お茶を片手に、テレビの真ん前に座っていた。
試合は、投手戦だった。
両チームともヒットが打てない。
長谷川の第1打席は、空振りの三振だった。
でも見ていて分かった事もある。
いつもよりもバットを振る勢いがすごい。
解説者も言っていた。
本当にホームランを打とうとしている。
第2打席、第3打席は四球で出塁。
第3打席で出塁した時は、盗塁を試みた。
だけど、失敗した。
試合はそのまま0対0で延長戦へともつれこんだ。
延長10回、両チームとも3者凡退。
延長11回、やっとヒットが続いたものの得点ならず。
相手もそうだった。
延長12回。
最終回までもつれた今日の試合。
相手が表に攻撃をしている。
ここで気の緩みが出たのか、チームの選手にエラーがついてしまった。
ピッチャーも不安定になって、次々とヒットを許した。
2失点。
これは大きな失点となりそうだ。
その回の攻撃は、その2失点だけで終わった。
裏は、5番打者から始まる。
今日ノーヒットの選手で、今回も空振った。
6番打者は、粘って粘って四球。
7番打者は、初球の甘く入ったカーブをセンター前に打った。
1アウト1、2塁。
そこで8番打者、長谷川が出てきた。
初球は見逃して、1ストライク。
次も見逃して2ストライク。
これじゃ、もう後がない。
続く第3球目はファール。
4、5球目もファールにした。
でもまだ2ストライクノーボール。
第6球目、相手バッテリーのミスが出て、ランナーは2、3塁へと変わった。
第7球目、ついにこの瞬間が来た。
甘く入ったカーブ。
7番打者と同じコースだった。
大きく振ったバットの芯にボールが当たる。
そのまま大きく弧を描いて、3階席まで飛んで行った。
…3ランホームラン。
逆転、サヨナラ勝ち。
燈和は、テレビの前で固まっていた。
もちろん、ヒーローインタビューは長谷川だった。
大歓声の中、嬉しそうな表情でインタビューを受けている。
そして、最後のひとことでは、こう言った。
『昨日電話してくれた人に、証明できたんじゃないかなぁって思ってます』
――――証明どころじゃないって…
長谷川は、本気だった。
それが十分すぎるほどに伝わってきた。




