019★最後の1ケタ
手に握られている小さな紙。
それには、長谷川の連絡先が書いてある。
思っていた以上に綺麗な字が、きちんと並んでいる。
学校では、すぐ噂が広まった。
真田と別れた事が。
ただ、長谷川とのかかわりは噂になっていない。
妃奈乃も真田も、誰にも話していないのだろう。
少しだけホッとした。
でも、かなり衝撃的な事が起こった。
テレビを見ていると、芸能特集のコーナーで流れた。
聞きたくもないようなこと。
『アナウンサーとプロ野球選手、熱愛か?』
よく見るアナウンサーと…長谷川だった。
燈和は、本当にショックを受けた。
連絡をするか、それともしないか。
悩んでいた。
手に握られている紙を綺麗に広げ、携帯をとりだした。
でも、なかなか番号が打てない。
緊張もあるけど、ニュースを見てさらに衝撃的で…
最後の数字が押せない。
その日は、最後まで押すことが出来なかった。
――――連絡して、もしつながったら…なんて言えばいいんだろう?
連絡する意味、それが明確ではない。
押す勇気が出ないのは、そのせいでもあった。
次の日、また芸能特集で流れた。
昨日の報道は、うそだったらしい。
アナウンサーを含む数人が、偶然野球選手数人に会っただけらしい。
それが本当なのかは分からない。
でも、少しだけ気が楽になった。
――――…本当のこと、聞いてみようかな?
かける理由を探していた燈和は、とりあえずこの報道について聞いてみようと思った。
でも、こんなこと聞いてもいいのかという気持ちもあった。
最後の1ケタ…8を押した。
すると、つながった。
『もしもし?』
「…もしもし、燈和です」
『!!どうしたの?』
「えっと――」
ストレートに聞くのはどうかと思い、とりあえず真田と別れたことを言った。
『…本当に別れてもよかったの?』
「はい。やっぱり真田君は友達の方がよかったので」
『そっか。よかった』
よかったの意味がどういう事なのか、やっぱり分からない。
この前は好きと言ってくれたのに、報道があったから…
「あの…すっごく聞きづらいんですけど、いいですか?」
『うん、いいよ』
「テレビで報道されたこと、本当ですか…?」
思い切って言った。
でも、ちょっとだけ言った事を後悔している。
ここでもし気まずくなったら…
『もしかして、妬いてくれてる?』