017★妃奈乃に相談
妃奈乃が買っていてくれた紅茶を、ひとくち飲んだ。
現実に引き戻されたような感じがした。
「何の相談か、当ててみようか?」
「う、うん」
「燈和にとって初めての、恋愛に関する相談でしょ」
「…うん」
「何かあったの?修司君と」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね…」
やっぱり話しづらい。
妃奈乃は、様子をうかがいながら燈和に質問していった。
「修司君のこと、好き?」
「…うん」
「長谷川選手のことは?」
「…好き」
「じゃぁ…修司君と長谷川選手、どっちが好き?」
言葉に詰まる。
本当のことを言えばいいじゃないか。
だけど、燈和自身分からなくなっていた。
「…分からない」
「そっか。今はそれでいいと思うけどな」
「うん…」
「燈和は、なんでそんなに長谷川選手のこと好きなの?」
ストレートに聞かれると、やっぱり答えづらい。
どう説明すれば伝わるのか…
「…かっこいいし、野球すっごく活躍してるし…すっごい優しいし…」
「ねぇ、その最後の『優しい』って、なんでわかるの?」
「な、なんでって…」
「テレビの中じゃそうかもしれないけど、現実じゃ分からないよ。スター選手なんだから」
「…分かってる。でも、本当に優しいんだもん」
状況を話すか話さないか、すっごく迷った。
迷って、迷って、迷って…
決心した。
「キャンプの時、ペン拾ってくれたの」
「それだけ?」
「…雨降ってる時、雷鳴ってて…」
「燈和、雷怖いもんね」
燈和は頷いた。
「その時に、大丈夫って言ってくれて…」
「言ってくれて…?」
「…頭なでてくれた///」
「う、うそっ!?長谷川選手に?」
「うん」
「あのスター選手に…っていうか、その前の話から凄いと思うけど」
「その前って?」
「なんでそんなに長谷川選手と話してんの?」
言われてみれば、すごい話だ。
あの大人気のスター選手と、普通に話している。
助けてもらったり、慰めてもらったり…
運がいいと言っていいのか。
「…アドレス」
「ん?」
「私、アドレス教えてもらった」
「…えぇぇっ!!ち、ちょっと、それヤバい!すごすぎるよ、燈和!!」
「うん…」
結局、キスされたことは言えなかった。
そして、どうするかの決断までは至らなかった。