016★悩み
いつの間にか雨もやんで、長谷川の熱も引いていた。
だけど、燈和の顔は火照ったままだった。
あの後、燈和は泣き続けた。
本当に辛かった。
たった2つしかない選択肢。
それに悩まされていた。
燈和のことを誰よりも思ってくれている真田。
ずっと憧れの存在だった長谷川。
今すぐにでも、長谷川のもとへ行きたい。
でも、真田には今までよくしてもらっていた。
それに、どうしても嫌いになれない。
その様子を理解したのか、長谷川は小さい紙に自分のメアドと番号を書いた。
そして、燈和に渡した。
大きな手で頭をポンポンッとすると、そのままランニングを再開した。
「どうしよう…」
どうする事も出来なくなった燈和は、駅に向かう足どりが重かった。
誰に相談しよう…
それとも、自分で解決策を見つけ出すか…
ふと頭に浮かんだのは、妃奈乃だった。
メールでは伝わらない気がする。
思い切って電話してみた。
プルルル…プルルル…
『もしもし、燈和?』
「うん、ごめんね。なんか急に」
『いいよ~。どうしたの?』
「…妃奈乃に相談したい事があるんだけど」
『私なんかでいいの?聞くよ』
「うん、ありがとう。でも、なんていうか…その…」
『今から暇?』
「うん」
『じゃぁ、いつものところに集合。じゃ、またあとでね』
「う、うん。じゃね…」
――――は、話がはやい…
妃奈乃は、こういう事にはてきぱきしている。
学校ではボーっとしてる事が多いけど。
とりあえず燈和は、相談できる相手を見つけることが出来た。
でもこれで気が楽になるとは限らない。
あとは自分自身。
自分がどんな答えを出すかによって、変わってくる。
悔いのないように、誰も傷つかないように…
そういう答えがあればいいのだけど。
電車の中で、燈和はずっと悩んでいた。
駅のホームを出て、数分歩くと待ち合わせ場所がある。
ていうか、学校の敷地内だ。
ちょうどいいスペースが空いているから、暇なときはいつもそこにいる。
サッカーも野球も見える場所だから。
妃奈乃は、もう来ていた。
学校に残っていたのかもしれない。
「遅くなってごめん」
「いいよ。燈和の相談聞くの、初めてじゃない?」
「あはは…そうかも。普段考えるようなことないし」
「何にも気にとめてないって感じだもんね。野球以外は」
ちょっとだけ『野球』という言葉に反応してしまった。
それに気付いたのか、妃奈乃は燈和をベンチへ誘った。