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015★好き、でも辛い




「――好き…」


――――ダメだ、やっぱり私、現実的な恋なんてできないっ!


燈和は、泣いてしまいたかった。

だけど、隣に長谷川がいたから泣かなかった。

雨の音に、燈和の声は消されていたはず。

長谷川には届いていない。

だけど、ちゃんと言った。

「好き」と、ちゃんと言った。


「俺、やっぱり熱あるからおかしくなっちゃったかも」

「えっ…―――」


初めは、理解不可能だった。

次第に意識がはっきりして行くなかで、今自分が置かれている状況を理解した。

というより、理解しようと頑張った。


長谷川は、燈和をギュッと抱きしめた。

肩に当たる長谷川の吐息が熱い。

それからゆっくりと燈和を放した。

顎を自分の方に寄せ、キスした。

あの時と同じように。

違うのは、長谷川がずっと離さないということ。


燈和は理解しようとしたけど、やっぱり無理だった。

頭が真っ白になって、何も考えられない。

真冬で寒いはずなのに、ものすごく熱い。

顔が真っ赤なのが分かる。

息が苦しい。

本当に、長谷川は熱がある。

手が熱い。


――――熱があるから、おかしくなっちゃったんだ…


されるがままの燈和は、とにかく自分が置かれている状況を整理しようと努力した。

到底、状況を整理することなんて無理。

すぐ真っ白になって、甘い誘惑に呑まれて。


やっと離れた。

思いっきり酸素を吸う。

顔が熱い。

ほわほわ、そしてボーっとしている。

長谷川の目を見る事が出来ない。

恥ずかしいし、いまだにドキドキしてるし。


「好きだよ」


長谷川はそうひとこと言うと、大きな手を燈和の頭の上にのせた。

それを振り払うのはできない。

だけど、燈和にも言いたいことはあった。


「…もう、振りまわさないでください」


そう。

今までずっと、長谷川の思わぬ行動で狂わされてきた。

今のだって、その気がないはず。

熱があるとは言っても、燈和はかなり困惑していた。


「俺は本気だよ」

「そんな…からかわないでください。本当に辛いですから…」

「俺の目を見て。本気だから」


そう言って、顔をあげられた。

視線がバッチリと合う。

どんどんまた顔が赤くなっていくのが分かる。

体の力が抜けて行く。

手先が痺れてきた。

なんでか分からないけど、長谷川の目はいつになく真剣だった。

さっきまでトロ~ンとしていたのに。


こらえていた涙が、一気にあふれだした。

辛い…

燈和には彼氏がいる。

でも、本当は長谷川が好き。

ずっと憧れのままだと思っていた。

その長谷川が今、目の前にいて「好き」と言ってくれている。

夢幻のような現実。

嬉しい思いの反面、かなり辛かった。




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