表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/40

014★揺れるココロ




雨はやまない。

何となくだけど、長谷川はさっきよりもきつそうにしている。


――――本当に大丈夫なのかな…?


「熱…まだかなりありますよ。早く救護室とか行った方が…」

「…でも、正直まだココにいたいんだ。救護室って、一般の人入れないから」


それをどういう意味で受け取ったらいいのか。

燈和は、今まで悩んで困っていたことを思い出した。

これっぽっちも思ってないくせに、その気があるようにふるまう。

好きだけど、ちょっとだけムカつく。


「あの…率直に聞きます。長谷川選手って、ドSですよね?」

「う~ん、そうなのかな?分からない」


――――いや、明らかにドSだって


雨がやむ気配はなく、雷が近づいてきた。

徐々に音が大きくなってくる。

燈和は、その場にうずくまった。


「…雷、怖いんだったね」

「はい…」


長谷川は、燈和の隣に座った。

燈和は驚いたけど、このままでいたいという気持ちの方が大きかったみたいだ。

今、実際に燈和の心は揺れている。

長谷川が好き。

でも、長谷川にその気はない。

だから、真田に逃げているだけ。

でも、真田も嫌いじゃない。


ピカッ!


ド――ンッ!


「ウキャっ!!」


ゴチンッ


燈和は、驚いた勢いで柱に頭をぶつけた。

ジンジンする。


「ったぁ~…」

「大丈夫?」

「私は大丈夫です。頭、丈夫なので…長谷川選手の方が心配ですよ」

「俺はこんなのも慣れてるから、大丈夫だよ」

「でも、やっぱり目がトロ~ンってしてきてるし」

「うん、ちょっとボーってする」

「やっぱり救護室に――」

「お願い、もうちょっとだけココにいてよ。ねっ?」


どうして連れて行かないんだ。

長谷川は、本当はものすごくきついはずだ。

なんで連れて行くことをそんなに拒むのか。

燈和は、長谷川の頼みを聞かないわけにはいかなかった。

こんな風に話が出来るのも、今だけなのかもしれない。

だから…という思いが強かった。


「ねぇ、彼氏君のこと、好き?」


ストレートに聞かれると、答えづらい。

でも、そう言われて考えてみた。

本当に真田のことが好きなのか。


「嫌いじゃありません。でも…」

「でも?」

「…正直、好きでもありません。もちろん、人としてはかなりいい人で…」

「やっぱり、そうなんだ」

「や、やっぱり?」

「何となくそう思ってたんだ」


――――エ、エスパー…


もしかすると、真田も気づいているのかもしれない。

その前に、燈和自身の行動が表していた。

2人でキャンプを見に来ても、燈和は1人でサインをもらいに行く。

正直、真田よりも選手の方が好き。

それに、知らないうちにいつも長谷川を追っていた。

バッティング練習も、ノックも、移動中も。

やっぱり、燈和は長谷川が好きだった。

世界で1番、誰よりも好きだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ