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013★悪天候




今日は真田と一緒じゃない。

真田は家の事情とかで、早退した。

だから、久々に1人でキャンプ地を訪れた。


天気はちょっとだけ悪い。

今日は運よく傘を持ってきている。

これなら、雷が鳴らない限り大丈夫だ。

すでに、かなり遠くの方では雷が鳴っているのだけど。


何気に予想していたことが当たった。

雨が降り出したのだ。

次第に強くなっていく。

大丈夫じゃなくなってきた。

折りたたみじゃなくて、しっかり傘を持ってきていたのが正解だった。


遠くから、人が来た。

薄暗い中、ぼんやりと見える。

見たことのある光景。

燈和の記憶が、少しずつよみがえってきた。


練習着を身にまとっている、身長の高い選手。

もう、結構濡れているように見えた。

顔がはっきりと分かったのは、すれ違ってからだった。


――――長谷川選手…


何も言わずに通り過ぎていく。

それがいじょうに悲しい。

思わず足が動き出した。


「長谷川選手!!」


呼びとめると、足が止まった。

そして、ゆっくりと振り返ってくる。

今、視線がバッチリあった。

今度は目をそらすことが出来ない。

そらすと、またどこかへ行ってしまいそうだったから。

燈和は、持っていた傘を差し出した。


「濡れますよ?」

「あ、ありがとう」


とりあえず、濡れない屋根の下へ向かった。

またあの自転車置き場だった。


傘を閉じて、自転車置き場の柱に立てかけた。

下はびしょびしょに濡れていた。


「今日、彼氏君は?」

「えっ…」

「この前一緒にいた子、彼氏でしょ?」


やっぱりそうだった。

燈和と真田を見ていた。


「…今日は、家の事情とかで先に帰りました」

「そうなんだ。じゃ、1人だ?」

「…はい」


…ックシュンッ!


長谷川がくしゃみした。

予想以上に可愛くて、思わず笑ってしまった。


「…やっぱ、このくしゃみって変だよね?」

「変とかじゃありませんっ!ただ、めちゃめちゃ可愛いです」

「よく女の子みたいって言われるんだ」


言った人の気持ちがよく分かる。

燈和は心の中で笑った。


数分後、またくしゃみした。

心配になってきた。

濡れたから、風邪をひいてしまったのか。

もっとひどい場合、熱が出てきたんじゃないか。


「大丈夫ですか?寒くないですか?」

「大丈夫だよ。うん、心配かけてごめんね」


そう言いながらも、寒そうにしていた。

燈和は、鞄の中から上着をとりだした。


「よかったら、コレ使ってください。練習着、濡れたままだと風邪ひいちゃいますよ」

「でも…いいの?」

「はい」

「ありがとう」


かなり大きめのサイズで買っていた白のパーカー。

持っていてよかった、と思った。


しかし、長谷川の様子がおかしい。

本当に熱があるのかもしれない。


「ふらふらしたりしませんか?」

「ふらふら?…分からないけど」


試しに、額に手を当ててみた。

かなり熱い。

これは確実に熱がある。

このままじゃ、大変だ。


「熱があるじゃないですか!!」

「本当に?」

「本当ですって。早く雨やまないかなぁ…とりあえず、休んだ方がいいですよ」

「なんか、お母さんみたいだね」

「えっ…あ、そ、そうですか?」


学校でも言われた。

お母さんみたいだ、と。


「雨がやむまで、ここにいてくれる?」

「…はい」




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