010★どこまでが本気?
頭は真っ白になるし、顔は真っ赤になるし…
どこまで本気で受け止めていいのか、分からなくなっていた。
今、長谷川は燈和の頭をなでている。
プロで活躍するスター選手が、普通の女子高生の頭をなでている。
普通に考えると、おかしな光景。
今は変な雑誌とかもあるわけだし、こういう事が誤解を招くのだろう。
だけど、やめてほしくなかった。
大きな手が頭に乗っていると、落ち着いた。
「少しは落ち着いた?」
「はい…」
「よかった、よかった」
雨が、少しずつ弱くなってきた。
それでも結構降っているのだが。
だんだん、周りが明るくなってきた。
太陽が見え始めたのだ。
「止みそうだね」
そう言っている間も、長谷川の手は燈和の頭の上に乗っていた。
逆に燈和の手は、長谷川の濡れた練習着を掴んでいた。
やっぱり誤解を招く光景。
人が通っていたら、きっと驚くだろう。
完全に雨がやんだ。
チームの練習時間も、もう終わりに近付いている。
「もうそろそろ、合流しないといけないんじゃないですか?」
「そうだなぁ、行かないと」
「じゃぁ、頑張ってくださいね!応援してるので」
「ありがとう。そう言ってもらえると、本当に嬉しいから」
そう言って、少し照れていた。
長谷川は脱いでいた練習着の上を、絞ってまた着た。
いつ見ても、爽やか。
笑う所なんて、爽やか中の爽やか。
燈和には、この時間が幻のように思えた。
「じゃぁね―――」
――――…!!
幻のように思えた。
幻…幻…まぼ、ろ、し?
長谷川は、また軽快に走っていく。
燈和は、ただぼう然とその姿を見ていた。
――――…1度、頭の中を整理してみよう
燈和は、記憶をすべて巻き戻していた。
長谷川が言った後、確かにした。
その時の様子を、考えていた。
「じゃぁね―――」
そう言うと、燈和の顎をクッと上げ、軽くキスした。
あれが夢や幻でなければ。
いや、現実のはずだ。
手が濡れている。
練習着を握っていたから。
思い出すと、さらに赤面した。
どこまで誤解を招くようなことをするのか。
本当に、何かの雑誌のスクープにもなりそうなことなのに。
『球界のスター、熱愛!?お相手は女子高校生』
こんな見出しで、雑誌に載ってしまいそうなことなのに。
正直、燈和自身は本気で長谷川に恋している。
だけど、長谷川にはこれっぽっちもそんな気はないはず。
長谷川の行動は、かなり燈和を悩ませた。