001★キャンプin
キャンプシーズン突入。
宮崎には、サッカーチームだの野球チームだの、プロのチームがたくさん来る。
あるサッカーチームは、今年優勝を果たした。
ある野球チームも、優勝した。
そのほかの大会でタイトルをとったチーム、そして世界で活躍した選手。
そんな人たちを一目見ようと、観光客でいっぱいになる。
地元に住む少女も、そのキャンプを見に来ていた。
毎年、サインをもらったり写真を一緒に撮ってもらったりしている。
今年は、試合を見る計画を立てていた。
藤井燈和には、今年注目している選手がいた。
野球選手で、今年ドラフト1位で入団した選手。
社会人野球のチームからプロ入りした、長谷川智行。
実力は、全球団が認めていた。
7球団が1位指名をしていたとか。
バッティングはもちろん、その守備範囲の広さにも定評があった。
そして、何と言ってもルックス。
イケメンと言えばイケメン。
可愛いと言えば可愛い。
爽やかと言えば爽やか。
身長180センチで、細身の選手だ。
すでに女性人気は群を抜いている。
なにより、細身でも腕の筋肉がすごい。
何気に腕フェチな燈和にとっては、もうたまんなかった。
練習終了後、バスに乗り込む長谷川を見つけた。
燈和のテンションは、もうMAXを過ぎていた。
「キャーッ」
黄色い歓声が、いっそう大きくなった。
バスに乗り込む時も、まわりの歓声にちょっと照れながら乗っていく。
席に座ってからも、外からの歓声は聞こえていただろう。
みんなが手を振って、キャーキャー言っている。
燈和も、手を振った。
大きく、ちょっと目立つように。
すると、それに気付いたのか、ちょっとだけ振り返してくれた。
初めは、燈和だけに振っているのかと思った。
けど、まわりにはたくさんのファンがいる。
――――私だけってこと、あり得ないよね…
それでも、やっぱり嬉しかった。
受験生になることなんて、すっかり忘れていた。