9話
最初の探索を終え、少し自信をつけた美々は、その後も数日間迷宮へ通い続けた。
探索するのは、ずっと一階層だ。
一階層に出現するモンスターはスライムだけ。
迷宮は入るたびに内部構造が変化すると言われているが、一階層はそれほど広くない。何度も歩き回るうちに、二階層へ続く階段も見つけていた。
だが、美々はそこへは行かなかった。
収入を考えれば、階層を降りていった方が良い。
それでも美々は、まだ二階層へ行くつもりはなかった。
一階層のスライムを、もっと楽に倒せるようになるまで。
慎重というより――臆病から来る判断だった。
そのため美々は、数日間ひたすら一階層を歩き回り、スライムを見つけては倒すという行動を繰り返した。
スライムをサーチアンドデストロイする日々である。
スライムのドロップ品はスライムゼリーだけではない。
もう一つ、迷宮コインと呼ばれるものがある。
迷宮コインはすべての階層、すべてのモンスターからドロップする可能性があり、大きさは五百円硬貨ほど。
深い階層のモンスターほど希少な鉱物で作られたコインを落とし、その価値も高くなる。
コインの表面には、ドロップしたモンスターの彫刻が刻まれている。
基本的には資源として扱われるが、コレクターも存在する。
希少なコインになるとオークションに出され、高値で取引されることもあるらしい。
一階層のスライムが落とすのは、鉄のコインだ。
数枚ほどドロップする。
低層階のコインは資源としての価値しかなく、公社も一キロ単位でしか買い取ってくれない。
そのため低層階では、いわばハズレ枠のドロップ品扱いだった。
それでも美々は、一枚だけ記念に残している。
初めて手に入れた迷宮の証のような気がしたからだ。
残りはある程度たまったら、まとめて買い取ってもらうつもりだった。
数日間迷宮を探索するうちに、美々の体にも少しずつ変化が現れてきた。
最初は二時間も探索するとヘロヘロになっていた。
しかし今では、以前より余裕を持って動ける。
警棒を振る速度も、ほんのわずかだが速くなっている気がした。
本当に僅かな違いだ。
それでも美々には分かる。
自分が――少しずつ強くなっていることが。
それが嬉しかった。




