57話
美々は自室のベッドに腰掛け、小さく息を吐いた。
冬休み中に取得したスキルを思い返す。
「……結構、増えたな」
ぽつりと呟きながら、頭の中で順に整理していく。
まずは、自分。
「【スライム殺し】【モルモット殺し】【アルマジロ殺し】……」
一定数の討伐、あるいは短時間での討伐数が条件となるスキル。
特定のモンスターに対して弱体化を与える、いわば“対種族特効”。
「しかも……上位種にも効く」
上位種であっても、同系統であれば効果は通る。
深い階層に進んでも無駄にならない、積み重ねの力。浅い階層で意識して積み上げた成果だった。
小さく頷く。
地道に戦い続けた結果が、確実に形になっている。
次に意識を向けるのは――
「【指揮】と【鬨の声】」
仲間の連携を補助し、自身と味方全体を強化するバフスキル【指揮】。
戦闘中の動きがより一層噛み合うようになったのは、この力のおかげだ。
そして【鬨の声】。
えい、えい、おう――と声を上げることで発動する強化スキル。
“えい、えい、おう”と声を上げるだけで、身体が軽くなり、力が湧く。人数が多いほど効果が上がるのも分かっている。
眷属たちも、声は出さないまま腕を振り上げて応じる。その光景が少しだけおかしくて、でも頼もしかった。
そこで、思考が止まる。
「……増えたんだよね」
【眷属召喚】の枠が、一つ増えた。
それはつまり、このスキルの伸びしろがさらに広がったということ。
眷属たちは声こそ出さないが、手を振り上げて同じ動作をすることで効果が乗る。
あの少し不思議な光景を思い出し、美々はわずかに口元を緩めた。
「……四人になる」
それだけで、できることは大きく変わる。
けれど――
「何を増やすかで、全部変わる」
笑みはすぐに消えた。
視線を落とし、次に兎見丸のことを考える。
「兎見丸は……【不動】と【火耐性】」
【不動】は発動中は移動に制限が掛かる代わりに、防御力とノックバック耐性を大きく強化するスキル。
「完全に、前衛タンク……」
そこに【火耐性】。
火吹キツネの炎を受け続けたことで得た力。
あのとき、焼かれながらも一歩も引かなかった姿が脳裏に浮かぶ。
「前は……任せられる」
むしろ、これ以上ないくらいに。
そして、辰見。
「【貫通】と【連射】」
放った攻撃の貫通力を高めるスキルと、装填速度を上げるスキル。
組み合わせとしては非常に単純だが――
「強いよね、これ……」
思わず本音が漏れる。
一直線に並んだ敵をまとめて撃ち抜く。
群れ相手には、これ以上ないほど相性がいい。
「後ろも、問題ない」
そこまで整理して――
美々はゆっくりと天井を見上げた。
「……じゃあ、新しい子は」
タンクを増やして、より安全にするか。
遠距離を増やして、面で制圧するか。
それとも――
「前に出れるアタッカー……」
自分と同じように動き、隙を埋める存在。
考えれば考えるほど、どれも間違いではない気がしてくる。
ベッドに軽く倒れ込み、息を吐いた。
「……悩むなぁ」
けれど、その声に重さはなかった。
むしろ、どこか楽しそうで。
強くなったからこそ、選べる。
選べるからこそ、迷える。
「……でも、楽しいかも」
小さく笑いながら、美々はもう一度、これからの戦いを思い描いた。




