53話
美々は、地形を利用し、土嚢や逆茂木を使った簡易防御陣地で迎撃することにした。
迷宮周辺エリアにある工務店で土嚢を調達し、鉄パイプの先端を加工して槍状にする。即席ではあるが、十分に殺傷力のある逆茂木だ。
十階層は通路が比較的狭く、分岐も多い。
(……ここなら)
美々が選んだのは、幅の狭い通路と袋小路が組み合わさった地点。
正面から来る敵の数を制限できる、理想的な迎撃地点だった。
インベントリから土嚢を取り出し、素早く積み上げる。
胸の高さほどの壁を形成。
その前方には、鉄パイプ製の逆茂木を設置する。
さらに、あえて一箇所だけ通り道を残す。
侵入経路の限定。
「……よし」
兎見丸はその通路の正面に配置。
侵入してくる個体を【挑発】と【鉄壁】で確実に抑える役割だ。
美々はその後方。
突破してきた敵に、確実に一撃を叩き込む。
辰見はさらに後方から援護。
土嚢を越えようとする個体には、【射撃】と【狙撃】で迎撃。
ネットで調べながら一生懸命に考えて作戦だ。
(ダメそうなら、すぐ逃げる)
最悪の場合は【トラベル】で離脱。
無理はしない。
準備を終え、美々はモンスター寄せのお香に火をつけた。
煙がゆらりと漂い――
やがて。
奥の闇から、複数の足音。
火吹キツネが三匹、こちらへと駆けてくる。
「……来た」
先制。
美々の【投擲】と、辰見の【狙撃】が同時に放たれる。
一匹に直撃。
体勢を崩す。
だが残りは――止まらない。
怒りを滲ませたまま、一直線に突っ込んでくる。
逆茂木に激突。
鋭い鉄杭が毛皮を裂き、血が散る。
勢いは確実に削がれ――
続けて土嚢の壁に体当たり。
鈍い音が響く。
だが、壁は崩れない。
(……耐えてる)
想定通り。
一匹が、用意された侵入経路へと滑り込む。
「来るよ」
兎見丸が【挑発】を発動。
意識を引きつけ、その場に押さえ込む。
火吹キツネが牙を剥き、炎を吐こうとする――その瞬間。
「今」
美々のスレッジハンマーが振り下ろされる。
重い一撃。
衝撃が内部まで貫き、キツネはそのまま崩れ落ちた。
同時に。
土嚢を飛び越えようとした別の一匹を――
辰見が撃ち抜く。
空中で軌道を失い、逆茂木へと落下。
そのまま串刺しになり、光の粒となって消えた。
残る一匹も、すでに満身創痍。
数秒後には、同じように処理される。
静寂。
「……いける」
美々は小さく呟いた。
不安は、まだある。
だが。
この陣地は機能している。




