51話
美々はリストを見ながら、しばらく考え――
まずは一階層から攻略することにした。
狙いは、スライムのドロップ品――スライムゼリー。
化粧水やシャンプー、コンディショナーなどに使われる素材で、特にスライムゼリー配合の製品は、美意識の高い女性たちから人気がある。
実は美々自身も、迷宮に通い始めてからそれを使っていた。
(……ちょっといいやつ)
そんなことを思い出しながら、一階層へと足を踏み入れる。
「……効率、上げないと」
美々はインベントリから、以前使った“モンスター寄せのお香”を取り出した。
火をつけると、独特の匂いが広がる。
しばらくすると――
ぬるり、と。
周囲からスライムが集まり始めた。
だが。
(……あれ?)
違和感があった。
寄ってくる数よりも、自分たちの殲滅速度の方が速い。
つまり――供給が足りていない。
「……増やそう」
一本、追加で焚く。
さらにスライムの数が増える。
だが、まだ足りない。
三本。四本。
煙が濃くなり、周囲の空気が揺らぐ。
――結果。
「……ちょうどいい」
四本焚いた状態で、ようやく“途切れない供給”が成立した。
スライムが次々と集まり、
そして次々と消えていく。
完全な作業だった。
兎見丸が前線を維持し、
美々が【衝撃】でまとめて潰し、
辰見が【狐火】で焼き払う。
止まらない。
考える必要すらない。
ただ、処理するだけ。
――その日。
美々は、規定数を大きく上回るスライムゼリーを回収した。
そして。
「……あ」
戦闘の合間、不意に身体の奥に何かが馴染む感覚が走る。
獲得スキル――【スライム殺し】。
スライム系モンスターを弱体化させるスキルだ。
“◯◯殺し”系スキルは、その種のモンスターを一定数以上討伐するか、短時間で大量に狩ることで習得すると言われている。
(……取りすぎた?)
そんなことを思いつつも、悪い気はしなかった。
むしろ――
効率が、さらに上がる。
その後、美々は大量のスライムゼリーを抱えて迷宮公社へ向かった。
受付に提出すると――
「……え?」
職員の手が止まる。
「これ……全部、一日でですか?」
明らかに想定を超えていた。
美々はこくりと頷く。
職員は一瞬言葉を失い、それから慌てて書類を確認し始めた。
「か、確認しますので少々お待ちください……!」
奥へと駆けていく背中を見送りながら、
美々は、少しだけ首を傾げる。
(……やりすぎた?)
だが――
その口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。




