42話
美々はすぐに辰見の再召喚を試みた。
だが――反応は無い。
「……え?」
もう一度。
集中して、呼びかける。
それでも――応答は無かった。
一瞬、嫌な予感がよぎる。
だが、完全に繋がりが途切れたわけではない。
微かに、まだ“いる”感覚はある。
「……あ」
理解する。
「クールタイム……」
どうやら、再召喚まで時間が必要らしい。
感覚的には――二日。
「……よかった」
美々は大きく息を吐いた。
完全に失ったわけではない。
それだけで、全身の力が抜けそうになる。
「ごめんね……」
小さく呟く。
少し無茶をした。
調子に乗っていたのかもしれない。
気を取り直し、兎見丸を見る。
「大丈夫?」
兎見丸はこくりと頷いた。
ダメージはあるが、まだ戦える状態だ。
その時――
兎見丸の体にわずかな光が走った。
「……あ」
スキル習得の感覚。
【シールドバッシュ】
盾での攻撃時、威力とノックバックに補正がかかるスキル。
「良かったね」
美々は少しだけ笑った。
確実に、強くなっている。
そして、周囲を見渡す。
アルビノキツネが消えた場所に、ドロップ品が残っていた。
まず目に入ったのは――
真っ白な毛皮。
戦っていた時の硬さが嘘のように、柔らかく滑らかだ。
指で撫でると、さらりと流れる。
「これ……すごい」
明らかに高級素材だ。
装備にすれば、かなりの性能になるだろう。
そして、もう一つ。
「……本?」
地面に落ちていたのは、一冊の古びた冊子。
表紙は擦り切れ、年季が入っている。
だが――ただの本ではない。
「まさか……」
美々は息を呑んだ。
スキルブック。
読むことでスキルを習得できる、超レアドロップ品。
市場ではそれだけで高額取引される。
スキルの内容によっては数百万円。
中には一千万円を超えることもある。
「……うそでしょ」
思わず呟く。
慎重に手に取り、表紙を確認する。
そこに書かれていた文字は――
【狐火】
「……聞いたことない」
少なくとも、美々の知識にはないスキルだ。
未知のスキル。
それだけで価値は跳ね上がる。
「……あとで調べよ」
無理にここで使う必要はない。
美々はスキルブックをインベントリにしまった。
もう一度、周囲を確認する。
敵の気配はない。
「……帰ろ」
今日は、ここまでだ。
三人で勝った。
だが――
完勝ではなかった。
迷宮を出る道すがら、美々は小さく息を吐いた。
「……ちょっと、調子乗ってたかも」
ぽつりと漏れる反省。
強くなっていた。
順調だった。
だから――油断した。
その結果が、あれだ。
「次は……ちゃんとやる」
静かに、そう決める。
二日後。
また三人で戦うために。




