41話
その後も数匹の火吹キツネを倒し――
辰見は【射撃】を習得した。
射撃攻撃の威力と命中率に補正が入るスキル。
「やったね」
美々が声をかける。
兎見丸も隣で頷く。
表情は無いが、どこか嬉しそうだ。
辰見も同じように――嬉しそうだった。
やっぱり表情は無いけれど。
「今日はこの辺で――」
引き上げようとした、その時だった。
奥から、ゆっくりと一匹の火吹キツネが歩いてくる。
足音は静か。
だが、存在感が違う。
美々は目を細めた。
「……白い?」
真っ白な毛皮。
光を反射するような、異質な美しさ。
アルビノ個体。
「構えて!」
空気が一変する。
三人は即座に臨戦体勢を取った。
睨み合い。
静寂。
――次の瞬間。
消えた。
そう錯覚するほどの速度で、アルビノキツネが間合いを詰める。
ドンッ!!
「っ――!?」
美々に体当たり。
速い。重い。
美々は咄嗟にスレッジハンマーの柄で受け止めるが――
止まらない。
そのまま吹き飛ばされた。
地面を転がる。
「がっ……!」
すぐに顔を上げる。
視界に映るのは――
口元に炎を溜めるアルビノキツネ。
まずい。
ドンッ!!
兎見丸が割り込み、盾で体当たりを叩き込む。
炎の発動を中断させた。
同時に――
ビシュッ!
辰見の弾が飛ぶ。
顔面に命中。
わずかに怯む。
その間に美々は体勢を立て直した。
「……強い」
思わず漏れる。
今までの火吹キツネとは、まるで別物だ。
速さも。
重さも。
そして、圧力も。
だが――
「いくよ!」
兎見丸が前に出る。
盾で攻撃を受け止める。
ガンッ!
アルビノキツネの爪が叩きつけられる。
その隙に――
ゴンッ!!
美々のハンマー。
ビシュッ!
辰見の弾。
連携はできている。
今まで積み上げてきた動き。
確実に当てていく。
だが――
「硬い……!」
手応えがおかしい。
ハンマーが当たるたび、鈍い金属音のような響きが返ってくる。
毛皮が、硬い。
辰見の弾もほとんど効いていない。
それでも攻撃を重ねる。
少しずつ。
少しずつ削る。
アルビノキツネの動きに、わずかな焦りが見えた。
その瞬間――
ボォッ!!
広範囲の炎が噴き出した。
さっきまでとは比べ物にならない規模。
「っ、下がって!」
三人は咄嗟に距離を取る。
だが――
陣形が、崩れる。
その隙を――
見逃さなかった。
アルビノキツネが一気に動く。
狙いは――
「辰見!!」
一瞬で距離を詰める。
ガブッ!!
辰見の肩に噛みついた。
「っ……!」
そのまま――振り回す。
軽い人形のように振り回され、叩きつけられる。
ドンッ!ドンッ!
地面に何度も打ち付けられる。
「やめろ!」
美々が踏み込む。
ゴンッ!!
全力で叩き込む。
だが――離さない。
さらに力を込める顎。
嫌な音がした。
メキッ――
「――っ!!」
次の瞬間。
辰見の体が、光に変わり始めた。
崩れていく。
消えていく。
「……うそ」
一瞬、思考が止まる。
「このっっ!!」
美々の叫び。
渾身の一撃。
ドゴンッ!!
アルビノキツネの体が大きく吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられる。
それでも――
その顔は。
どこか満足げだった。
やってやった、と言わんばかりに。
次の瞬間、光となって消えた。
静寂が戻る。




