表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/62

4話

美々は迷宮探索者資格の講習会場に来ていた。

市内の研修センターの大きな会議室。

夏休み期間ということもあり、会場には若い人が多かった。大学生や高校生らしき参加者が目立つ。

何人か、学校で見かけた顔もあった。

(……同じ学校の人だ)

気づかれないように視線を逸らす。

会場では、皆それぞれ思い思いの席に座っていた。

前の方に座る人、後ろの方に固まるグループ、壁際でスマホを見ている人。

友達同士で来ているらしい人たちも多く、あちこちで会話が聞こえる。

「最初はスライム狩りだよな」

「ゴブリンって結構強いらしいぞ」

「動画で見たけど宝箱とかあるんだって」

楽しそうな声が飛び交い、会場は少し騒がしかった。

美々は人目につかないよう、部屋の端の席に静かに座る。

鞄を膝の上に置き、両手でぎゅっと抱えた。

(……人、多い)

少し緊張する。

だが、ここまで来たのだ。

今さら帰るわけにはいかない。

しばらくすると、前方の扉が開いた。

スーツ姿の男性が入ってくる。

胸元には迷宮公社の職員証が付いていた。

男性は教壇に立つと、マイクを手に取った。

「それでは、迷宮探索者資格取得講習を始めます」

ざわついていた会場が少しずつ静かになる。

まず説明されたのは、迷宮探索の大前提だった。

迷宮内で起きる出来事は、すべて自己責任。

怪我をしても、事故に遭っても、

最悪の場合――命を落としたとしても。

迷宮公社は責任を負わない。

それが迷宮探索というものらしい。

美々は思わず背筋を伸ばした。

次に説明されたのは、迷宮で手に入る物の扱いについてだった。

モンスターのドロップ品や迷宮内で発見された資源は、基本的に迷宮公社が買い取る。

それらは公社を通じて市場に流通し、社会で利用される。

個人同士での売買も禁止されてはいないが、危険物の取引は禁止されており、

取引した品物や相手については公社へ報告する義務があるという。

ただし、公社を通して売却する場合は税制面での優遇や手続きの簡略化などの利点があるらしい。

説明を聞きながら、美々はノートにメモを書き込んでいく。

(なるほど……)

さらに法律の話が続いた。

探索者資格を持つ者が犯罪を行った場合、

一般人よりも重い刑罰が科される。

探索者は武器を扱い、時には人間以上の力を持つ。

だからこそ社会的責任も重いのだと説明された。

次に装備品の管理について。

武器や防具などの装備は、基本的に迷宮周辺に設置された公社の貸しロッカーに保管することになっている。

迷宮周辺の規定エリア外に持ち出すことは禁止されているらしい。

別の迷宮へ遠征する場合などは、公社の専用ケースに入れて運搬しなければならない。

さらに、探索中の行動についても説明があった。

迷宮の探索は、基本的に映像記録を残すことが推奨されている。

多くの探索者は小型カメラを装備して迷宮に入る。

探索者同士でトラブルが起きた場合、その映像を確認するためだ。

ただし、公社がその映像を本人の許可なく公開することはないという。

そして最後に説明されたのは、迷宮への入退場管理だった。

迷宮の入口には必ずゲートが設けられており、

入場と退場はすべて記録されている。

迷宮に入ってから七日以上退場記録がなければ、行方不明扱い。

さらに三十日経過すると、死亡扱いになるらしい。

長期間探索する予定がある場合は、事前に申請が必要とのことだった。

説明が一通り終わると、参加者全員に冊子が配られた。

迷宮関連法規集。

ずっしりとした厚さがある。

「これらの規則はすべて探索者として守る義務があります」

職員は淡々と言った。

「知らなかった、では済みません」

美々は冊子をめくりながら思う。

(……思ったより厳しい)

迷宮はゲームみたいなものだと思っていた。

だが実際は違う。

法律もある。

ルールもある。

そして何より――本当に危険な場所なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ