39話
美々は【トラベル】を使用し、五階層へ移動した。
そこから階段を下り、六階層へ向かう。
六階層に出てくるモンスターは――
猛犬チワワ。
見た目はチワワだが、普通のチワワより二回りほど大きい。
体つきは妙に筋肉質で、四肢は太く、地面をしっかりと踏みしめている。
口元からは鋭い牙が覗き、可愛らしさはまったく無い。
完全に――猛犬だ。
「……いた」
岩陰から、一匹の猛犬チワワが現れた。
低い唸り声。
グルルルル……
その瞬間、猛犬チワワが地面を蹴った。
速い。
低い姿勢のまま一直線に突っ込んでくる。
「兎見丸!」
美々が声を上げる。
兎見丸が前に出て盾を構えた。
ガンッ!
猛犬チワワの体当たりが盾にぶつかる。
かなりの衝撃だが、兎見丸は踏ん張った。
【鉄壁】で強化された防御力がしっかり効いている。
「辰見、今!」
美々が叫ぶ。
後方で辰見がスリングショットを構えていた。
スチール玉を装填。
ゴムを引き絞る。
狙う。
ビシュッ!
高速で放たれた玉が猛犬チワワの脇腹に当たった。
ドンッ。
衝撃に猛犬チワワの体が揺れる。
「グァッ!」
わずかに動きが止まる。
その瞬間――
「いくよ!」
美々が踏み込んだ。
スレッジハンマーを大きく振りかぶる。
筋力強化された腕が、重い鉄塊を軽々と振り抜く。
ゴンッ!!
鈍い音が六階層に響いた。
ハンマーが猛犬チワワの頭部を直撃する。
衝撃で体が宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられた。
猛犬チワワは数回痙攣し――消えた。
「よし!」
美々が小さく拳を握る。
だが、戦いはまだ終わらない。
すぐに次の猛犬チワワが現れる。
グルルル……
二匹。
「来るよ!」
兎見丸が前で盾を構える。
一匹が飛びかかる。
ガンッ!
盾に噛みつく。
もう一匹が横から回り込もうとする。
「辰見!」
ビシュッ!
スチール玉が飛ぶ。
――カン!
「痛っ!」
美々のヘルメットに当たった。
「ちょ、こっちじゃない!」
思わずツッコミを入れる。
辰見は少し慌てた様子で構え直す。
もう一発。
ビシュッ!
今度は猛犬チワワの脚に命中。
ドンッ。
衝撃で体勢が崩れる。
「今!」
美々が踏み込み、ハンマーを振り下ろす。
ドゴン!!
一撃で地面に叩きつけた。
兎見丸も盾で押し込み、もう一匹の動きを止める。
そこへ辰見の弾。
ビシュッ!
コツン。
猛犬チワワの鼻先に命中。
一瞬ひるむ。
その隙に――
「終わり!」
ハンマーが落ちた。
ゴン!!
猛犬チワワはそのまま消滅した。
それからも戦闘は何度も続いた。
何度も猛犬チワワと戦い、
何度も辰見の弾が飛ぶ。
ときどき――
カン!
兎見丸の盾。
ゴン!
美々の肩当て。
フレンドリーファイアも何度かあった。
だが、それも徐々に減っていく。
辰見の狙いは確実に良くなっていた。
命中率も上がっている。
一階層でスライム相手に戦っていた頃の兎見丸より、明らかに成長が早い。
「うん……」
美々は少し頷いた。
「ちゃんとパワーレベリング出来てる」
三人の連携も、少しずつ形になってきた。
前衛――兎見丸。
後衛――辰見。
中衛――美々。
理想的な形だ。
猛犬チワワを倒すと、地面にドロップ品が現れた。
美々はそれを拾い上げる。
猛犬チワワがプリントされた袋。
書かれている文字は――
ドッグフード。
「……」
美々は袋を見つめた。
「まあ……犬だしね」
袋の中には茶色い粒がぎっしり入っている。
栄養満点、と書かれていた。
美々は少し考えてから呟く。
「これ食べた犬、絶対ムキムキになるよね……」
六階層には、そんなドロップ品が落ちていた。




