36話
美々は、二体目の眷属を召喚してみることにした。
小さな幾何学模様の円陣が、足元に浮かび上がる。
やがてその中心から、眷属が現れた。
「……あれ?」
出てきたのは、兎見丸と同じ――
薄いピンク色のピクトグラムだった。
見た目はほとんど変わらない。
違うのは、ただ一つ。
美々は近くに落ちていた警棒を持たせてみた。
「ちょっと振ってみて」
眷属はこくりと頷くように動き、警棒を振る。
ブン。
ブン。
「……遅い」
明らかに、兎見丸より動きが鈍い。
どうやら、兎見丸が積み重ねてきた経験は共有されていないらしい。
つまり――
また一から鍛える必要がある。
「でも……」
美々は、思わず笑ってしまった。
「楽しそう」
チームメンバーが増えた。
それだけで、できることが増える。
連携も取れる。
役割分担もできる。
そして何より、安全性も上がる。
「名前……どうしよう」
少し考えて、美々は決めた。
「辰見」
最初の眷属は兎見丸。
なら次は、十二支。
辰の文字を使った名前だ。
「そのうち――」
美々は少しニヤニヤする。
「兎見美々、十二神将とか名乗ったりして」
そんな妄想をしながら、美々は迷宮を後にした。
家に帰り、ゆっくりと考える。
【トラベル】も習得した。
だから、六階層へ行くこともできる。
それとも――
一階層から、新しい眷属を鍛えるか。
少し悩む。
けれど。
「……今の私と兎見丸なら」
新しい眷属を守りながら戦える気がする。
階層は浅いがパワーレベリングをすればいい。
そう決めると、次に考えるのは戦い方だ。
「どういう方向で鍛えようかな」
美々は指を折りながら考える。
美々はアタッカー。
兎見丸はタンク。
なら次は――
「遠距離攻撃かな」
後ろから攻撃できる仲間がいれば、戦い方の幅が広がる。
「よし」
明日、遠距離武器を買いに行こう。
弓か。
それとも投擲武器か。
そんなことを考えていると、自然と胸が高鳴る。
これからもっと強くなる。
もっとチームらしくなる。
兎見丸。
そして辰見。
三人での迷宮探索が、今から楽しみだった。
美々はワクワクした気持ちのまま、布団に潜り込んだ。




