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30話

翌日以降も、美々はモンスター寄せのお香を使い続けた。

場所は変わらず迷宮の一階層。

スライムしか出ない安全な場所だ。

お香に火をつけると、しばらくしてスライムが現れる。

一匹。

二匹。

そして次々と。

数日使ってみて分かったことがあった。

お香一個で集まるスライムの数は――

だいたい百匹から二百匹ほど。

その時によって多少ばらつきはあるが、それくらいだった。

美々はそのスライムを、兎見丸にどんどん戦わせていく。

もちろん危ないときはすぐ援護する。

だが、最初の頃に比べて兎見丸は確実に強くなっていた。

最初はスライム一匹倒すだけでも苦戦していた。

体当たりを受けてよろけ、ナイフの振りも遅かった。

だが今は違う。

盾で体当たりを受け止める。

そしてすぐにナイフで反撃する。

動きはまだ少しゆっくりだが、迷いが無い。

スライム一匹なら問題なく倒せる。

さらに――

二匹、三匹と同時に相手をすることも出来るようになっていた。

「すごいね、兎見丸」

美々は思わず声をかける。

兎見丸は相変わらず表情の無いピンク色の体をしている。

目も口も無い。

それでも、なんとなく。

少し得意そうに見えた。

戦闘を繰り返すうちに、美々との連携も良くなっていた。

美々がスライムを引き付ける。

その隙に兎見丸が攻撃する。

逆に兎見丸が囲まれそうになると、美々がスレッジハンマーで助ける。

言葉で細かく指示を出しているわけではない。

それでも、なぜか動きが噛み合う。

元々、兎見丸は美々のスキルで召喚された眷属。

声に出さなくても。

ある程度、美々の意思が兎見丸に伝わっているようだった。

「右!」

と美々が声を出せば、兎見丸はちゃんと右を警戒する。

声に出さなくても、なんとなく通じることもある。

それが少し不思議で、少し嬉しかった。

そんな訓練を続けて数日。

その日も、いつものようにスライムと戦っていた。

兎見丸が盾で体当たりを受ける。

そしてナイフで反撃する。

その動きが、ふと変わった。

盾を構える姿勢が、少しだけ安定している。

スライムの体当たりを、しっかり受け止める。

その瞬間。

美々の頭の中に情報が流れ込んできた。

「……え?」

突然の感覚に、美々は目を瞬く。

だがすぐに理解する。

兎見丸がスキルを習得した。

習得したスキルは――

【盾術】

スキルの情報が自然と理解できる。

【盾術】

盾の扱いに補正が入るスキル。

防御の精度や、盾の扱いが向上する。

「……すごい」

美々は思わず呟いた。

兎見丸がスキルを覚えた。

しかも、自分はその内容をちゃんと理解できている。

眷属のスキルまで把握できるらしい。

兎見丸はいつものピンク色の姿のままだ。

目も口も無い。

表情も無い。

それなのに――

なんとなく。

ほんの少しだけ。

嬉しそうに見えた。

「よかったね、兎見丸」

美々がそう言うと。

兎見丸は盾を構え直し、またスライムに向かっていった。

その動きは、少しだけ頼もしくなっていた。

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