3話
迷宮探索者資格の講習は、夏休みに行われる。
それまでの間、美々は準備を始めた。
体力作りだ。
まずはランニング。
家の近所を走ることにした。
だが――
「はぁ……っ、はぁ……っ」
一キロも走らないうちに、美々は息切れしていた。
膝に手をつき、ぜぇぜぇと肩で息をする。
体力が、ない。
もともと運動は得意ではない。
体育の成績も普通より下くらいだ。
それでも、美々は諦めなかった。
次の日も走る。
その次の日も。
最初は一キロでへろへろだったが、少しずつ距離を伸ばしていく。
家では筋トレも始めた。
腹筋。
「いち……に……」
十回。
それだけで翌日には筋肉痛になった。
情けない体力だ。
それでも、美々は続けた。
ランニング。
腹筋。
ストレッチ。
毎日、少しずつ。
そしてトレーニングと並行して、迷宮の情報も集めていた。
迷宮公社が公開しているウェブサイト。
そこには迷宮の基本情報や、確認されているモンスターのデータが載っている。
スライム。
ゴブリン。
ラット系モンスター。
危険度や行動パターン。
初心者が注意するポイント。
美々はそれらを何度も読み返した。
ノートにメモまで取る。
ぼっちなので時間はたくさんある。
気がつけば、迷宮のことを考えている時間が一番楽しかった。
そうして日々は過ぎていき――
やがて夏休みが始まった。
学校では、クラスメイトたちが浮き足立っていた。
「海行こうぜ!」
「いいね!」
「花火大会もあるよね!」
「祭りも行きたい!」
楽しそうに夏休みの予定を話している。
当然。
美々に声はかからない。
美々は少しだけ視線を下げる。
でも、今回はあまり落ち込まなかった。
美々にも、予定があるからだ。
夏休みの予定。
それは――
迷宮。
迷宮探索者資格の講習。
そして。
迷宮に入ること。
(……頑張ろう)
美々は小さく拳を握った。




