表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

26話

学校が終わると、まっすぐ迷宮へ向かう。

そんな日々が続いていた。

特別な出来事はほとんどない。

けれど、ほんの少しずつ自分が変わっているのは分かっていた。

スレッジハンマーの扱いにも、だいぶ慣れてきた。

最初のころは、岩石アルマジロを倒すのに六発も必要だった。

重たいハンマーを何度も振り下ろし、腕が震えて、息が切れて、それでもなかなか倒れない。そんな戦いだった。

それが今では――

五発。

四発。

最近では三発で倒せることもある。

そして、その日は。

五階層で岩石アルマジロと向かい合っていた。

ゴロゴロと岩をこすり合わせるような音を立てながら、アルマジロがこちらを向く。

丸くなった体の隙間から、黒い目がこちらを見ていた。

美々はスレッジハンマーを握り直す。

足の位置を少しずらす。

呼吸を整える。

アルマジロが動いた。

地面を蹴り、突進してくる。

重たい体が勢いよく迫る。

美々は横へ跳んだ。

突進が空振りする。

その隙に――

ハンマーを振り上げる。

「えいっ!」

ゴンッ!!

重たい衝撃が腕に伝わる。

ハンマーが甲殻に叩きつけられた。

岩石アルマジロの体がぐらりと揺れる。

もう一度。

振り下ろす。

ゴンッ!!

アルマジロの動きが鈍る。

そして――

三撃目。

ゴッ!!

そのまま、アルマジロは動かなくなった。

「……倒せた」

美々は息を吐いた。

その瞬間だった。

頭の奥に、突然情報が流れ込んでくる。

スキルを習得しました。

【眷属召喚】

「え……?」

思わず声が出る。

同時に、スキルの内容が理解できた。

【眷属召喚】

自分の眷属を召喚するスキル。

召喚された眷属は、召喚者の命令に従って行動する。

ただし、召喚者からあまり離れることはできない。

さらに――

眷属はモンスターを倒すことで強化される。

そして、スキルを習得することもできる。

「……え、ちょっと待って」

美々はその場で固まった。

そんなスキル、聞いたことがない。

それに。

「……これ、すごくない?」

思わず呟く。

一人なのに。

チームが作れる。

しかも眷属は、倒したモンスターで強くなる。

さらにスキルまで覚える。

「……もしかして」

胸が少し高鳴る。

「チームメンバーとか、いらない……?」

つい、そんなことを考えてしまった。

――いや、それはちょっと違う気がする。

人見知りを直すために探索者をやっているのに。

それでも。

このスキルがすごいのは間違いない。

美々は周囲を見回した。

モンスターの気配はない。

「……召喚してみよう」

少し緊張しながらスキルを発動する。

すると。

足元に光が広がった。

白く発光する円。

その中には、細かな幾何学模様が刻まれている。

小さな魔法陣のようだった。

光が強くなる。

そして。

その中心から――

何かが現れた。

「……え?」

美々は首をかしげる。

そこにいたのは。

人型だった。

でも――

なんだか、変だった。

簡単に言うと。

立体化したピクトグラム。

避難誘導の標識などに描かれている、あの人型。

あれがそのまま三次元になったような姿だった。

色は薄いピンク。

顔はない。

目も口もない。

というか。

どっちが正面なのか、よく分からない。

「……」

ピンクの人型は、ただ立っていた。

「……聞こえる?」

反応はない。

やっぱり会話はできなさそうだった。

美々はしばらく考えてから、実験することにした。

一階層まで戻る。

そして眷属に、予備の武器――警棒を持たせた。

ピクトグラムの手に警棒を渡す。

ちゃんと握った。

「えっと……」

美々はスライムを指さす。

「……あれと戦ってみて」

ピンクの眷属が、ゆっくり歩き出す。

スライムも、ゆっくり近づいてくる。

そして。

ぼよん。

スライムの体当たり。

眷属が少し後ろに下がる。

それから。

ぶん。

とてもゆっくり警棒を振る。

ぺち。

スライムに当たる。

「……」

ものすごく、のんびりした戦いだった。

スライムが体当たり。

眷属が警棒。

スライムが体当たり。

眷属が警棒。

ゆっくり。

とてもゆっくり。

時間をかけて戦う。

やがて――

スライムが、ぱしゃんと消えた。

眷属の勝ちだった。

「……」

美々はしばらく黙った。

そして。

「……弱い」

正直な感想だった。

スライムとほぼ互角だった。

ちょっと不安になる。

でも。

眷属はモンスターを倒すことで強化される。

これから強くなるはずだ。

美々はピンクの眷属を見た。

「……よし」

小さく頷く。

「これから、一緒に強くなろう」

ピンクの眷属は、何も言わない。

でも。

なんとなく。

ほんの少しだけ、頼もしく見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ