23話
しばらく歩いて、目的の店に到着する。
探索者向けの装備を扱う店。
美々が初めて装備を買った場所だった。
「ここ?」
ひよりが店の看板を見上げる。
「う、うん……」
二人は店の中に入った。
棚には武器や防具が並んでいる。
ナイフ、ショートソード、警棒。
革の防具やプロテクター、ヘルメットなど。
美々は店内を見回しながら言った。
「えっと……私、最初に店員さんに勧められた装備を、そのまま買ったんだけど……」
そう言って棚の一角を指さす。
「このあたり」
そこに並んでいたのは、比較的シンプルな装備だった。
特殊警棒。
カーボンファイバー製のジャージ。
肘や膝のプロテクター。
それにヘルメット。
「低層階なら……この装備で、特に困ったことはなかったよ」
ひよりは装備を手に取りながら眺める。
「へえ……」
しばらく見てから、ふと顔を上げた。
「どうして警棒にしたの?」
「え?」
「剣とかナイフもあるでしょ?」
美々は少し考えてから答える。
「えっと……刃物って、使い慣れてないと……」
言葉を探しながら続ける。
「自分を傷つけそうで、怖くて……」
「なるほど」
「あと……手入れも大変そうだったから……」
ひよりは納得したように頷いた。
「確かに。刃物はメンテナンスいるもんね」
今度は防具を手に取る。
「防具はどうしてこれ?」
美々は少し気まずそうに答えた。
「……店員さんに勧められたから」
「正直だね」
「あと……予算的に、これぐらいが限界で……」
「ふむふむ」
「でも、実際に使ってみて……問題はなかったよ」
ひよりは腕を組んで考え込む。
店内をぐるりと見渡す。
そしてしばらく悩んだあと――
「よし」
棚から装備を手に取った。
「私もこれにする」
「えっ」
「兎見さんと同じ装備」
美々は驚いた。
「い、いいの?」
「うん」
ひよりはにこっと笑う。
「実際に使ってる人の意見が一番参考になるから」
その後、ひよりは一式の装備を購入した。
店の外に出る。
夕方の光が通りを照らしていた。
ひよりは美々の方を向く。
「今日はありがとう」
「え?」
「とても参考になったよ」
美々は少し照れて視線をそらす。
「……う、うん」
すると、ひよりが少し身を乗り出した。
「ねえ」
「はい?」
「良かったら、連絡先交換しようよ」
「えっ」
思わず声が出た。
ひよりは首をかしげる。
「ダメ?」
「い、いや……」
美々は慌ててスマホを取り出す。
「だ、大丈夫……」
二人は連絡先を交換した。
「じゃあ、またね」
ひよりは手を振る。
そして、そのまま帰っていった。
小さくなっていく背中を、美々はしばらく見送る。
それから、自分も歩き出した。
帰り道。
足取りは――
迷宮に来たときよりも、少しだけ軽かった。




