20話
岩石アルマジロを倒すことができた美々だったが、迷宮探索は一旦中止することになった。
理由は単純だ。
夏休みがもうすぐ終わるからである。
残り日数を確認した美々は、思わず青ざめた。
「……あっ」
宿題が、ほとんど終わっていない。
迷宮探索が思った以上に楽しくて、つい後回しにしてしまっていたのだ。
(まずい……)
しかも夏休み明けにはテストもある。
もし成績が落ちたら――
探索者活動は禁止。
親からそう言われている。
「そ、それは困る……」
元々、美々が迷宮探索者になろうと思ったのは、人見知りで内気な自分を変えるためだった。
だが実際に迷宮へ入ってみると、それ以上に魅力があった。
戦えば戦うほど強くなる。
努力した分だけ結果が出る。
それがとても分かりやすい。
美々はすっかり迷宮探索にハマっていた。
(禁止されるのは……ヤダ)
小さく首を振る。
それに――
学校での話題にもなるかもしれない。
美々の頭の中では、すでに妄想が始まっていた。
クラスメイトが聞いてくる。
「え? 迷宮行ってるの?」
「すごいじゃん!」
「モンスターってどんな感じ?」
みんなが興味津々で話しかけてくる。
美々は少し照れながら答える。
「べ、別に普通だよ……」
――人気者。
そこまで想像して。
「ウヒッ」
思わず変な笑い声が出た。
しかし現実は厳しい。
まずは宿題を終わらせなければならない。
美々は机に向かった。
迷宮で戦う時とは違う意味で、真剣な顔になる。
数学の問題集。
国語の読書感想文。
英語のワーク。
山のような宿題とテスト勉強。
残りの夏休みは、ほとんどをそれに費やすことになった。
迷宮には行けない。
だが、不思議と前ほど退屈ではなかった。
迷宮という楽しみがあるからだ。
「早く終わらせよ……」
美々は鉛筆を握り直す。
そしてふと思う。
(学校……ちょっと楽しみかも)
人見知りで、いつもは憂鬱だった学校。
だが今年の二学期は――
少しだけ、楽しみに思えた。




