19話
五階層。
美々は新しく買ったスレッジハンマーを両手で握りしめながら、慎重に通路を進んでいた。これまで使っていた警棒とは比べものにならないほど重い武器だ。だがその重さが、逆に頼もしさを感じさせた。
前回、この階層に来たときは何もできなかった。警棒は曲がり、まともに戦うことすらできなかった。
(今度は……)
そう心の中で呟きながら、足を進める。
その時だった。
通路の奥から、聞き覚えのある音が響いてきた。
コロコロコロ……。
岩石アルマジロだ。
丸まった体で転がりながら、美々の方へ向かってくる。岩の塊のようなその姿は、やはり威圧感がある。
やがて岩石アルマジロは美々を認識したのか、転がる速度を少し上げた。
迫ってくる。
だが今回は逃げない。
美々はスレッジハンマーを大きく振りかぶり、足を踏ん張って待ち構える。
タイミングを見極める。
転がる岩石アルマジロが目の前まで来た瞬間――
「やっ!」
掛け声とともに、思いきりスレッジハンマーを振り下ろした。
ガキンッ!!
硬質な音が迷宮に響き渡る。
同時に、これまでの武器では感じたことのない重い手応えが腕に伝わった。
衝撃で腕が震える。
だが、今度は武器が負けていない。
「ムンッ!」
美々はさらに気合を入れ、力いっぱい振り抜いた。
スレッジハンマーの重い一撃は、丸まった岩石アルマジロを弾き飛ばす。
岩石アルマジロは転がりながら後方へ吹き飛び、
ゴンッ!
と迷宮の壁にぶつかった。
体勢が崩れ、動きが止まる。
(今だ!)
美々はすぐに駆け寄った。
両手でハンマーを振り上げ、思いきり振り下ろす。
ドンッ!
一撃。
ドンッ!
二撃。
ドンッ!
三撃。
硬く鈍い音が迷宮の通路に響く。
岩石アルマジロは体を伸ばして反撃しようとするが、美々は攻撃の手を止めない。
四発。
五発。
腕が重くなる。
それでも振り続ける。
そして――
六発目。
ドンッ!!
重い一撃が決まると同時に、岩石アルマジロは光になって消えた。
戦闘が終わった。
美々はその場で大きく息を吐いた。
「はぁ……はぁ……」
腕がじんじんと痺れている。
【打撃】スキルで強化された攻撃とはいえ、やはり岩石アルマジロの防御力は高かった。
それでも――
倒せた。
美々はスレッジハンマーを持ち上げて確認する。
前回のように曲がったり、壊れたりしていないか不安だった。
しかし武器には傷一つ見当たらない。
頑丈な作りのままだ。
美々は小さく頷いた。
「よし……」
これなら戦える。
五階層でも、ちゃんと戦える。
その事実に、美々は少しだけ自信を感じていた。




