18話
美々は迷宮近くの探索者装備品専門店に入り、新しい武器を探し始めた。
五階層で遭遇した岩石アルマジロの硬さは、今までとは明らかに違っていた。警棒では歯が立たない。
(打撃武器……)
美々は店内に並ぶ武器を見て回る。
棍棒。
メイス。
ハンマー。
どれも【打撃】スキルを活かせる武器だ。
しかし――
「た、高い……」
値札を見て思わず小さく呟く。
どれも簡単に手が出る値段ではない。
どうしようかと悩んでいると、背後から声がかかった。
「また来てくれたんですね」
振り返ると、以前装備を勧めてくれた女性店員だった。
店員は美々の顔を見て、にこりと笑う。
「覚えてますよ。最初の装備を買いに来た新人探索者さんですよね」
「ひゃっ……あ、えっと……」
突然話しかけられ、美々はビクッと肩を震わせる。
「ウ、ウヒッ……」
変な笑い声が出る。
それでも店員は気にした様子もなく、穏やかに聞いた。
「今日は武器をお探しですか?」
美々はたどたどしく事情を説明する。
五階層で岩石アルマジロと戦ったこと。
警棒が壊れてしまったこと。
新しい武器が必要なこと。
そして――
「よ、予算が……あまり……なくて……」
最後は少し小さな声になった。
店員は少し考える。
武器棚を見ながら、しばらく悩んだあと一本の武器を取り出した。
「でしたら、これなんてどうでしょう」
それは――
スレッジハンマーだった。
建物の解体などに使われる、大きなハンマーだ。
「本来は工事用の道具なんですが、迷宮探索用に改良されたものです」
店員は説明する。
「他の武器と比べると安いですし、とても頑丈です。岩石系モンスターにも有効ですよ」
確かに値段を見ると、他の武器よりかなり安い。
美々は両手で持ってみる。
「……お、重い」
だが持てないほどではない。
以前の美々なら振り回すこともできなかっただろう。
だが、迷宮で戦い続けて身体能力が強化された今なら――
「……いけるかも」
美々はハンマーを何度か振ってみる。
ずっしりとした重みが腕に伝わる。
「こ、これ……ください」
購入を決めた。
さらに、曲がってしまった警棒と同じものも一本購入する。
念のための予備武器だ。
そして、何度も迷宮で戦って傷んできたプロテクターなどの装備も買い替えた。
会計を済ませる。
探索で少しずつ貯めていたお金は――
またほとんど無くなった。
「……が、頑張って稼がないと」
美々は新しいスレッジハンマーを見ながら、小さく呟いた。
次に向かう場所はもちろん――
五階層。
岩石アルマジロへの、再挑戦である。




