15話
美々は、洞窟コウモリからドロップした投げナイフをいくつか残しておき、投擲用の武器として使ってみることにした。
身体能力が向上しているおかげで、思ったより速く投げることはできる。だが、いざ一階層のスライムを相手にして投げてみると――なかなか当たらない。
「……あれ?」
一度投げて外れる。
もう一度投げて外れる。
何回も投げて、ようやく一度当たる程度だった。
使い物になるかどうか分からない。
だが、迷宮公社のホームページに公開されているスキルリストには【投擲】というスキルがあった。いつか習得できるかもしれない。
スキルの習得には、自分の行動が大きく影響すると言われている。
(だったら、色々試してみよう)
美々はそう考えた。
しかし、あまりにも当たらない。
このまま迷宮の中で練習するより、まずは基礎を身につけたほうがいい。そう思い、美々は迷宮の外にある訓練所へ向かった。
訓練所では探索者たちが様々な訓練をしている。その中には、元探索者のトレーナーもいた。
美々は的に向かって投げナイフを投げ続けていた。
外れる。
また外れる。
何度も投げていると、近くで見ていたトレーナーが声を掛けてきた。
「少しいいかな?」
突然のことに、美々はビクリと肩を震わせる。
「ひゃ、ひゃい……」
いつもの人見知りが発動し、しどろもどろになる。
だがトレーナーは気にした様子もなく、美々の投擲フォームを見てくれた。
「腕だけで投げてるね。肩から振る感じで」
「あと、手首はこう」
そう言いながら、実際に動きを見せてくれる。
何度か投げ方を直してもらうと、ナイフの軌道が少しずつ安定してきた。
「うん、その感じだ」
最後にトレーナーは笑って言った。
「頑張れよ」
美々は少し慌てながら頭を下げる。
「ウ、ウヒッ……あ、ありがとうございます……」
変な笑い声が出てしまったが、トレーナーは気にした様子もなかった。
それから数日。
美々は訓練所で何度も的当ての練習を続けた。
最初よりは、かなりマシになってきた。
そこで再び迷宮に入り、スライムを相手に試してみる。
スライムが美々に気づかない距離から投げる。
ヒュッ。
ナイフが飛び――
グサッ。
当たった。
「おお……」
止まっている相手なら当たるようになっていた。
次はわざとスライムに気づかせる。
スライムが跳ねながら近づいてくる。
そこへナイフを投げる。
ヒュッ。
また当たる。
よく考えれば、スライムは回避行動を取らない。止まっているのと大して変わらなかった。
次に美々は二階層へ移動した。
噛みつきモルモットに投げてみる。
モルモットは美々を見つけると、一直線に突進してくる。
ヒュッ。
ナイフが飛び、モルモットに当たった。
スライムのように一撃では倒せない。
だが――
「止まった」
ナイフが刺さると、モルモットの動きが一瞬止まる。
そこへ警棒で追撃。
「……これ、使えるかも?」
強い武器ではない。
それでも、一つの攻撃手段にはなる。
これからも使っていこう。
ただ一つ問題があった。
投げナイフが――脆すぎる。
迷宮の壁に当たれば一発で壊れる。
訓練所の的当てでも、何本も壊した。
つまり、ナイフを補充するには洞窟コウモリを倒さなければならない。
美々は三階層へ向かった。
だが、洞窟コウモリ相手では投げナイフが当たらない。
ひらりと避けられる。
当たらないと、仲間を呼ばれる。
囲まれる。
仕方なく警棒と盾で倒す。
また洞窟コウモリが現れる。
投げナイフを投げる。
外れる。
仲間を呼ばれる。
ナイフは壊れる。
また戦う。
そんなことを何度も繰り返した。
数日後。
洞窟コウモリに向かってナイフを投げた瞬間。
体の中に、ふっと何かが理解として流れ込んできた。
(あ……)
美々は思わず呟く。
【投擲】スキルを習得した。




