13話
翌日。
美々はいつものように迷宮へ向かった。貸しロッカーから装備を取り出し、更衣室で身に着ける。
警棒。
プロテクター。
ヘルメット。
そして――噛牙の盾。
丸い盾の表面には、噛みつきモルモットの彫刻が彫られている。バックラーと呼ばれる種類の盾だ。昨日手に入れたばかりの装備である。
美々は軽く腕にはめてみる。
「……ちょっと重い」
だが持てないほどではない。それに、盾があるだけで少し安心感があった。
「よし」
美々は迷宮の入口をくぐった。
二階層。
いつものようにモルモットを探して歩く。
キーキー。
通路の先から鳴き声が聞こえた。
一匹の噛みつきモルモットが、美々に気付いて突進してくる。
「来た」
今までなら横に避けていた。
だが今日は違う。
美々は盾を構えた。
「……えい!」
ドンッ!!
モルモットの頭突きが盾にぶつかる。衝撃が腕に伝わる。
「うっ」
思ったより重い衝撃だった。
その瞬間――
ガブッ!!
盾の表面に刻まれたモルモットの彫刻が、一瞬光った。何かが噛みつくような衝撃がモルモットへと返る。
「キーッ!?」
モルモットが驚いたような声を上げて後ろに跳ねた。
美々は目を丸くする。
「え……?」
今のが――噛牙の盾の能力。
モルモットは体勢を崩している。美々はすかさず警棒を振り下ろした。
バシッ!
さらにもう一撃。
バシッ!
モルモットは光になって消えた。
「……」
少しの沈黙。
そして美々は盾を見た。
「すごい……」
避けなくてもいい。受けるだけで反撃できる。
これは思ったより強い。
その後もモルモットを探して歩く。
二匹目。
突進してきたモルモットに対し、美々は盾を構える。
ドンッ!
また盾で受ける。
しかし今度は何も起きない。
「……あれ?」
能力は発動しなかった。どうやら確率発動らしい。
それでも問題はない。
美々は警棒で殴る。避ける。殴る。
そしてモルモットを倒した。
三匹目。
ドンッ!!
盾で受けた瞬間――
ガブッ!!
また噛みつきの衝撃が発生した。
モルモットが大きく怯む。
「おおっ」
美々は思わず声を上げた。
その隙に警棒を叩き込み、モルモットを倒す。
避けるのが遅れても、盾で受ければいい。そして運が良ければ反撃まで入る。
臆病な美々でも、戦いやすい。
「これ……いい盾だ」
美々は小さく笑った。
そして今日も二時間ほどモルモットを狩り続け、息を切らしながら迷宮を出た。
少しずつ。
本当に少しずつだが――
美々は探索者として強くなっていた。




