12話
ヘロヘロになりながら、美々は迷宮公社の買取受付へ向かった。
「ドロップ品の買取、お願いします……」
カウンターにアルビノモルモットの毛皮と、丸い盾を差し出す。
受付の職員はそれを手に取ると、最初はいつものように確認していたが――
「あれ……?」
盾を見た瞬間、表情が変わった。
何度も盾をひっくり返して確認する。
そして顔を上げると、美々に言った。
「すみません、少しお待ちいただけますか?」
そう言うと、慌てた様子で受付の奥へ消えていった。
しばらくして戻ってきた職員は、もう一人の男性を連れてきていた。
どうやら上司らしい。
男性は盾を手に取り、じっくりと観察する。
「……なるほど」
そう言って頷いた。
「これは噛牙の盾ですね」
「え?」
美々は目を丸くした。
「この盾は、噛みつきモルモットのレアドロップ品です」
男性は説明を続ける。
「この盾には特殊能力があります」
「盾で攻撃を受けたとき、一定確率で相手に噛みつきダメージの反撃が発生します」
「いわば、防御と同時に反撃できる盾ですね」
美々は思わず盾を見つめた。
「ただし」
男性は続ける。
「盾そのものの防御性能や能力の強さは、そこまで高くありません」
「ですが――」
男性は少し笑う。
「レアモンスターのレアドロップ品です」
「今までにも確認されている数は、ほんの数個ほどしかありません」
「もしオークションに出せば……」
少し間を置いて言った。
「かなりの高額になるでしょう」
美々は少し考え込んだ。
確かに売ればお金になる。
探索を続けるにはお金も必要だ。
だが――
美々は小さく首を振った。
「……これ、自分で使います」
そう言った。
自分が倒したモンスターが落とした装備だ。
初めてのレア装備。
売る気にはなれなかった。
男性は少し驚いたようだったが、すぐに頷いた。
「分かりました。それも良い選択だと思います」
次に毛皮の査定が行われた。
アルビノモルモットの毛皮。
こちらも珍しい素材らしい。
査定結果は――
五万円。
「ご、五万……?」
思わず声が出た。
今までのスライムゼリーやモルモットの毛皮とは桁が違う。
「アルビノ個体の毛皮は人気がありますからね」
職員が説明する。
美々はお金を受け取った。
今日は大変だった。
痛い思いもした。
息も切れて、体もクタクタだ。
それでも――
スキルを習得した。
レアな装備も手に入れた。
そして、お金も稼げた。
(……頑張ってよかった)
美々は少し満足した気持ちで、迷宮エリアを後にし、ゆっくりと家へ帰っていった。




