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1話

世界は度大きく変わった。

第二次世界大戦が終わった直後――

世界各地に、突如として「迷宮ダンジョン」が出現したのだ。

内部には、人類を襲う未知の生物。

後に「迷宮生物モンスター」と呼ばれる存在がいた。

人が迷宮に入れば襲われる。

だが、モンスターを倒すと不思議なことが起きた。

死体が消え、代わりに物品が残るのだ。

それは武器だったり、素材だったり、宝石のような物だったりした。

人々はそれを「ドロップ品」と呼んだ。

さらに迷宮の奥では、銅や鉄といった鉱物資源も発見された。

戦争で疲弊していた各国は、迷宮を調査し、資源を回収し、やがてそれを国家事業として利用し始める。

迷宮は恐怖の対象であると同時に、

莫大な利益を生む「資源庫」でもあったのだ。

日本も例外ではない。

日本政府は迷宮を比較的早い段階で一般人に公開した。

探索者として迷宮に挑む者は急増する。

当然、犠牲者も多く出た。

だがその代わりに、日本は急速な復興を果たした。

やがて迷宮は国家によって管理されるようになり、

公営組織――迷宮公社が設立される。

探索者登録制度。

迷宮資源の管理。

迷宮内での権利やルール。

こうしてかつて無法地帯だった迷宮にも、法律が生まれた。

そして――

戦後から八十年。

迷宮はもはや「未知の脅威」ではない。

大学生がアルバイトとして迷宮に入り、

会社員が副業でモンスターを狩る。

そんな時代。

ダンジョンの存在は、

すでに当たり前の日常になっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……」

高校一年生、兎見美々(ウサミ ミミ)は焦っていた。

友達が、いない。

入学して三か月。

いまだに一人もいない。

中学生のころも友達はいなかった。

だから高校では頑張ろうと決めていたのだ。

――今度こそ友達を作る、と。

だが、現実はうまくいかなかった。

別にいじめられているわけではない。

ただ、美々が壊滅的にコミュニケーションが下手なだけだった。

話しかけられると笑顔が引きつる。

返事をしようとしてどもる。

頭が真っ白になる。

そしてテンパると、なぜか変な笑い声が出る。

「ウ、ウェへッ……」

自分でも意味がわからない。

当然、会話は続かない。

そんなことを繰り返しているうちに、美々はクラスで完全なぼっちになっていた。

昼休み。

美々は机に座り、本を開いていた。

もちろん、読んではいない。

読書しているふりだ。

ぼっちが一人で座っていると、どうしても周りの視線が気になる。

(どうしよう……)

(このままじゃダメだよね……)

(でも、話しかけられてもうまく返事できないし……)

(自分から話しかける勇気もないし……)

(そもそも話題がない……)

そんなことを考えていると、近くから声が聞こえてきた。

「俺さ、迷宮探索者資格取ったんだよね」

「えっ、マジで!?」

クラスメイトたちが一人の男子を囲む。

「すげーじゃん!」

「もう迷宮入れるの?」

「俺も迷宮行きたいなー」

「私もー!」

楽しそうな声。

その会話を聞きながら、美々は思った。

(迷宮……)

この世界にはダンジョンがある。

モンスターが出て、宝物が手に入る迷宮。

探索者は人気の職業だ。

テレビでもよく特集されている。

そして――

(私も迷宮に行ったら……)

(話題……できるかも……)

その瞬間、美々の頭の中は迷宮のことでいっぱいになった。

授業が始まっても、ほとんど耳に入らない。

美々は机の下でスマホを取り出し、こっそり検索する。

――迷宮探索者資格 取り方。

画面を見つめながら、美々は小さくつぶやいた。

「……迷宮、行こうかな」

ウェへッ、と変な笑い声が出た。

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