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名を欲しがる者

風走り隊に、変化が出たのは、

戦が一段落した頃だった。

若い兵が、一人。

速かった。

投げも正確だった。

回収も、危なげがない。

三拍子そろっていた。

夜、焚き火のそばで、

その若い兵が言った。

「この戦い方、評価されませんね」

誰も答えなかった。

火の音だけが鳴る。

「俺、功績が欲しいんです」

言葉は正直だった。

「名があれば、昇進できる。

家に金を送れる」

彼は、黙って聞いていた。

翌日の戦で、

若い兵は前に出た。

いつもより、半歩だけ。

風走りにとって、

その半歩は、深すぎた。

投げる。

当てる。

敵が下がる。

だが、

戻らなかった。

「戻れ」

彼が言った。

若い兵は、聞こえないふりをした。

さらに一歩。

敵が、振り向く。

その瞬間、

若い兵は“見えた”。

敵の隊長。

旗。

名を上げる機会。

彼は、突っ込んだ。

結果は、早かった。

敵は倒れた。

だが、若い兵も倒れた。

致命傷ではない。

だが、

走れなかった。

風走り隊は、

全員で引いた。

助けられない距離ではなかった。

だが、

助けると全員が止まる。

彼は、一瞬だけ、立ち止まった。

それから、言った。

「引く」

戦は勝った。

英雄はまた、名を上げた。

若い兵は、

後日、昇進した。

「勇敢な突撃だった」

そう記録された。

だが、

彼は風走り隊には戻らなかった。

戻れなかった。

走れなくなったからだ。

夜、

誰かが聞いた。

「……間違ってたんですか?」

彼は、首を振った。

「選んだだけだ」

「俺たちは?」

「選ばない」

その日から、

風走り隊には、

“掟”が一つ増えた。

名を追う者は、走れない。

誰も、口に出さなかったが、

全員が理解した。

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